心臓が震える――。
これは文学の表現ではない。物理学の現象としてだ。
きしむ鉄、打ちつける鉄、ひずんだ鉄の音たちが暴れ狂う『鉄男』において、最重要課題は映画館という小さな世界など破壊するがごとく、ライヴハウスの熱狂で音と映像を体験してもらうこと。
「もっと大きく」
何も起こっていないのに観客が恐怖を感じるほどの音。激しいライヴの後の疲労感がおとずれる音。スピーカーから物理的に風圧がくるほどの音。
塚本監督の要求に、サウンド・スペース・コンポーザー・井出祐昭氏、日本を代表する音響家・増旭氏がそれ以上のもので応えていく。
できあがったサウンドは「怪物」としか言いようがないとてつもないもの。
その音は、建物自体をも揺るがせる。
しかしそれだけではない。
観る者の肉体を締めつけるほどの体感とともに、静寂すら描ききる繊細さをも兼ねそろえていることの驚き。これこそ「kicリアルサウンド」の実力だ。
この音の豊穣は、塚本監督をして
「『鉄男』の作品世界に、完全に入り込んでしまう」
と言わしめた。
名づけて「BULLET SOUND」。
凶暴な「音の弾丸」が、あなたの全身をつらぬく。