サンキュー・スモーキング

監督■ジェイソン・ライトマン (監督アイヴァンの息子)
出演■アーロン・エッカート(『ブラック・ダリア』)
     ケイト・ホームズ(トム・クルーズ妻)
     ウィリアム・H・メイシー(『ファーゴ』)
配給■FOX
    公式HP こちら

 タバコのパッケージを模したバツグンに洒落たタイトルバックの後、すぐに始まるのはTVの討論番組。論者は5人。禁煙団体のおばちゃん2人。厚生省の役人、薬の副作用で髪が抜けてしまっているガンの少年、そして主人公のタバコ業界のロビイストだ。圧倒的な多数でタバコ業界を糾弾しようとする明らかに偏向した番組。しかし、始まってすぐ、主人公は間髪入れず攻めに出る。
「われわれは、この少年に生きて欲しいと思っている。大切な顧客だからだ。だが保険厚生省は自分たちの意見を通すために、彼の死を望んでいるじゃないかッ! われわれは彼のような子供がこれ以上増えないよう、未成年者禁煙キャンペーンに5千万ドル出します!」
  圧倒される観客、何も言えない他の論者、ロビイストは笑顔で少年とがっちり握手。割れるような拍手。番組終了。
  Yes!! これは脳にクる、気骨あるブラック・コメディだ。この冒頭の主人公による「看破」は、全編を貫き通す。容赦なく道徳に立ち向かってみせる。
  監督は『ゴースト・バスターズ』で知られるアイヴァン・ライトマンの息子、ジェイソン・ライトマン。デビュー作。いきなりのオヤジ越えである。…いや、それは言い過ぎか。
  トム・クルーズの妻、ケイト・ホームズが、セクシーな新聞記者役で登場。主人公は『ブラック・ダリア』と2本同時公開となったアーロン・エッカート。
  都内での上映は、シネマシティとシャンテ・シネだけ。映画ファンなら、こういうの観なくちゃ。

 

 時として、目的のためには過程は問われないことがある。
  今作の主人公の目的は「タバコ業界の利益を守ること」で、これは健康的な側面から言えば「悪」だ。だが、彼の発言には嘘はない。何かを隠そうとしても、それは返って疑いを深めたり、相手の警戒心を強くするだけだと心得ているから、何でもあけすけに発言してしまう。そうしておいて、問題の軸を各論から総論にズラしていって、論点を消滅させてしまうのだ。
  かたや「善」なる目的のほうは、自分の目的に対する確固たる自信からくる傲慢がある上に、解決への具体的対策のために問題を矮小化せざるを得ないから(タバコのパッケージにドクロ・マークをプリントする!)、どうしても論はスキだらけになってしまう。
  さらに加えるなら、「悪」は「黒い」手段はもちろん「灰色」の手段を使うことができるが、「善」には「純白」しか許されない。タバコ業界が禁煙団体に寄付することは出来ても、禁煙団体が政治家にワイロを握らせるのは(少なくとも表だっては)出来ないではないか。そんなことがバレたら、すぐに「偽善」のレッテルが貼られてメチャクチャに言われてしまう。
  かくも不利ゆえ「善」は足を踏み外しがちだ。映画が始まってすぐのTVの討論番組みたいに、公平さを失った議論の場を作って糾弾してやろうなんて手にも出てしまうわけだ。やがて「善」と「悪」との見分けはつかなくなってしまう。正しいのはどっちだ? 「嘘つきの善」VS「正直な悪」。全てはグレー・ゾーンへとなだれ込む。
  このカオスな曖昧さの中で、では、われわれに求められるのは何か? この映画は、そこを問うてくるのだ。  


時間表は>こちら

『ワイルド・スピード×3』
『そうかもしれない』
『ラスト・キャッスル』
『ウルトラマンメビウス 』
21日、22日のみ上映

 

『地下鉄(メトロ)に乗って』
『トリスタンとイゾルデ』
『スネーク・フライト』PG-12
『天使の卵』 
『サムサッカー』PG-12


日本版公式HP でも アメリカ版 のほうがいいデザイン。【ページ更新】で毎回カラー変わります。



vol.13 ロス先生とジャック・バウアー 


  映画は、何はともあれ、「吹き替え版」なんです。

 
  まぁ、最近の僕のコーナーでは「吹き替え、吹き替え」うるさいのですけれど。よくよく調べてみると、世界各国の映画館の中で、特に非英語圏の欧州では一般的に吹き替え版上映が主流なのだそうで、逆に字幕版での上映はいわゆるマニアな方々向けなのだそうです。しかし、このような国際情勢(?)の中、日本では字幕版が好まれる傾向が強いそうです(いろいろ事情もあるみたいですが、また今度のお話で)。
  ただ、最近では日本国内でも吹き替え版の需要も高まっているのも事実のようです。
  ここ数年のシネコンブームで国内スクリーン数が増えてきたため、吹き替え版を上映出来る余裕が生まれてきたという理由と、やっぱり映画を観るわけですから、字幕を追い続けていると、映像に集中出来ない。だから吹き替え版を観るという理由が存在しているようです。

 という事になってくると、吹き替えられた声は大変重要なわけであります。
  なんせ、海外の俳優が日本語をしゃべってるわけですから、それだけでも基本的に違和感なわけです。

「ジョン。最後に妻にこう伝えてくれ。「愛してるよ」、と」(ほぼ修羅場の時に友人に向けてよく言いますね)とか、
「オー!なんだい?このオンボロ車は!?」(コメディー映画なんかで、「えっ? この車で移動するの?」なんて時によく言いますね)とか、
「地獄で会おうぜ、ベイビー」(人型殺人アンドロイドが軽いジョークの意味も含めて別れ際の時なんかによく言いますね)とか、
  こんな台詞、日本人は日本語でほとんど言いません(なんだか恥ずかしいですからね)。

 でも、吹き替え版はこんな台詞がバシバシ出てくるわけです。
  だけどなんだか違和感を感じないんです(時々は感じますけども)。何というか、日本語だけれども、日本語の会話に聞こえない(?)感じとでも言いましょうか(僕だけだとは思いますが)。海外の役者の生声に聞こえて見えるわけです。まさに吹き替えている声優さんの力量とでもいいましょうか(本当のところは「声優さん」という名称にも誤解があるようですが)。

 そんな吹き替え業界で、最近かなりのベストマッチな関係が成立しているのが、小山力也氏であります。

 と言われても、パッとは誰の吹き替えを担当しているかわからない方も多いはず。
  はい、氏の担当の代表的な俳優さんでは

 ジョージ・クルーニー氏がございます。

「なるほど、あの声ね」という方が多いはずですが、さらに怒涛の攻勢で最近では、

 キーファー・サザーランド氏もございます。

 なんたる「男節」。絶対にどちらも24時間働けます。それだけでは飽き足らず、24時間『ER』で働いた後に、スポーツジムなんかに行っちゃって疲れを癒さんばかりの男気を感じる役者さん。確実にウォッカでプロテイン飲みます(主食はカロリーメイト)。
  そんな「This is 男」俳優の吹き替えを難なくこなす小山氏。ただ男気感じる声だけではなく、台詞の行間に「艶」を感じる美声をも合わせ持つ、まさに「ミスター・フェロモンヴォイス」の持ち主なんであります。
  それもそのはず、小山力也氏。本名も同じく小山力也。この力也という名前、「力道山」から命名されたという話。命名の段階で、すでに男らしいわけです。さらには、学生時代は「松田優作」のファンだったとのこと。そりゃ、艶も出るわけですね。
「空手チョップ」と「なんじゃこりゃ〜!!!」の融合。なんだか、ジョージもキーファーも両者共に演じられそうです。

 そんなキーファー(どんなキーファー?)出演作が公開中であります。

『ザ・センチネル 陰謀の星条旗』

 シークレットサービス役を演じるキーファー・サザーランド。
  またもや『24』と同じく、国のために尽くす。男気溢れるガッツなお仕事です。
  ええ、ええ、確かに皆さんお察しの通り、当劇場では吹き替え版での上映ではございません。字幕スーパー版であります(やはり吹き替え版にはそれなりのコストが掛かる事も事実のようです)。
  しかし、しかしですね、『24』を夜中頑張って観ていた、そこのあなた。あなたですよ!
  ぜひ劇場でキーファー・サザーランドの活躍を観ようじゃありませんか!(実は主演はマイケル・ダグラス)
  あれだけ毎夜『24』観たわけですから、多分聞こえてきますよ。
  小山力也氏のあの声が…。
 








   始まっております第11回シネマカウンシル「ダメ男に慰みのエレジーを」。ジャケ写のインパクトがそうさせているのか、はたまた他の2作が消費されきっているのか、『刑務所の中』が現在トップを走っております。
  ものすごく個人的な意見を言わせていただけば、『刑務所の中』はまだ新しいので、他の2本を上映したいところです。この2本、あと半年くらいで権利切れなんですね。だから今回がスクリーンで観られるラスト・チャンスかも知れないのです。
 
  特に『ビッグ・リボウスキ』はその可能性が高いです。『フル・モンティ』は『フラガール』の大ヒットを受けて、もしかしたらどこかが「元気が出るイギリス映画」みたいなくくりで『ブラス!』や『カレンダー・ガール』なんかといっしょに上映しそうな感じがまだあります(『フラガール』は炭坑町を舞台にしたささやかなサクセスストーリーという枠組みがこれらの作品と共通するのです)。ですが、『ビッグ・リボウスキ』にその可能性は低いですね。コーエン兄弟の新作の話も聞かないですし(『パリ、ジュテーム』が来年春に来ますが、短編のオムニバスですからね)。

 90年代にはコーエン兄弟の作品は、好きも嫌いも、観てなければ映画ファンとしてモグリ、みたいな感じがありました。トリッキーで凝りに凝った映像と、ジャンル映画を自由自在にミクスチャする新鮮な感覚に驚き、そうでありながら結構まともな着地点に降り立ってしれっとしている独特の味わいに、魅了された人はとてもたくさんおりました。
  『バートン・フィンク』でカンヌ映画祭パルム・ドール(最高賞)と監督賞と主演男優賞を制覇。一気に名をあげ、『未来は今』でビッグ・バジェット作品に挑むも大コケ(でもこの作品かなり面白いですけど)。しかし『ファーゴ』にてまたもやカンヌで監督賞を獲得、映画も大ヒットして名誉挽回、ノリにノってきたところで炸裂したのが『ビッグ・リボウスキ』なのです。賞レースとは無縁の作品ですが、これをコーエン兄弟のベストとする人はとても多いです。

 フィリップ・マーロウと、ボーリングと、サダム・フセインと、バズビー・バークリーとをMix。

 これは映画の「ロング・アイランド・アイスティ」(ドライ・ジン、ラム、テキーラ、ウォッカ、とありったけのスピリッツを入れて、さらにコアントローを混ぜ、レモンジュースとコーラを足して、なぜか紅茶の味になる不思議カクテル)? こんなデタラメな組み合わせで、こんな芳醇なある種の人間賛歌が生まれるなんて、魔法を観ているような気になってきます。何をどうしたらこういうブレンドを思いつくのか。当時私はあまりの面白さに卒倒しそうになりました。しかもこれほどの狂騒を繰り広げておきながら、最後は笑いとともにひとしずくの涙、です。この幕切れは個人的映画史に燦然と輝く名場面です。もちろん「ジーザス」という名の変態を怪演したジョン・タトゥーロの姿も忘れがたいですけどね! ペロリ。

 当時も映画館に3度も通い、DVDも買って観ましたが、まだ観たいですね。シネマシティでは上映しておりませんし。サム・エリオット(『サンキュー・スモーキング』出演中)の渋い声を、kicリアルサウンドで聞き直したいなあ、と思うわけです。さあ、投票を!

  地味ィに、『ラスト・キャッスル』上映中! スカスカのナチュラル「シネマスイート」状態ではありますが、それで「漢(おとこ)」の熱が下がるわけではありません。熱くたぎれ! なかなかないこの機会をお見逃しなく!

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『フル・モンティ』 DVD発売中 20世紀フォックス ホームエンターテイメント
(C)2006 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『刑務所の中』 DVD発売中 \4,935(税込) TDBD-2035
発売元■アーティストフィルム、東芝デジタルフロンティア  販売元■ジェネオン エンタテインメント
『ビッグ・リボウスキ』 DVD発売中 \2,500(税込) ACBF-10344
発売元■アスミック  販売元■角川エンタテインメント   (C)PolyGram Film Entertainment Distribution, Inc. 1998


 先週紹介した「ユナイテッドシネマ豊洲」に行ってきた。「キッザニア」で話題の「ららぽーと 豊洲」の3F。もちろん、上等な服で。普段ほとんどはく機会のないナチュラルカラーの革パンとボタンが割れた銀貨みたいな白いシャツ、黒の革ナロータイというスタイルで決めてみる。胸ポケットにはAURORAの万年筆HASTIL。一番大切なペン。

 実際行ってみると、内装やなんかの豪華さでは「TOHOシネマズ六本木」のほうが上かな、と思うのだが、やはり一時期のいかにもアミューズメントでフューチャーな感じはもうちょっと古い感じがして、「豊洲」のほうが洒落ている感が強い。
  はい、ここから映画館です、みたいな作りになっておらず、入り口っぽいのもなく、ただ開けっぴろげな空間が拡がっているので、チケット売場はホテルのロビーそのものみたいな感じがする。
  ウワサの(?)併設のカフェ([Breathe])にも入ってきた。こともあろうに、今週のリコメンドの原稿はここで書いたのである。ガラス張りの向こうには、海と、レインボーブリッジ、そして夕陽が落ちてきていた。コリンズ・グラスのモスコミュールを片手に、ケッパーベリーをつまみながら、船がゆくのを眺める。万年筆のペン先に、橙色の光。たおやかに流れる時間。「HI LIFE」


  しかし、仕事も忘れない男は、思い出したかのように紅茶もオーダーする。ひと口。…よし、負けてない。部分的には負けてない。しかもシネマシティではこのクオリティを併設の店でなくコンセッションで出しているのだもの。

 陽が落ちて街に灯りがともり始めた。…! ああそうか。ここは3Fだ。そして都心からは少し距離がある。つまり夜景は、美しいが、少し寂しい。だから「夕日」をおしているのか。上手いなあ。

 おみやげに、コンセッションできれいに陳列されているクッキーとチョコを買う。ひとつ600円〜700円。今日いくら使ったっけ。女の子とはよほどじゃないとなかなか来れないよ。

 帰りはゆりかもめで新橋まで。広い窓から見える夜景が、まだ現実感を失わせてくれている。こんな都会の煌めくパノラマに、コンゴ出身のミュージシャンLokua Kanzaの音楽がこれほどフィットするなんて思ってもいなかった。光の粒、ひとつひとつに命が吹き込まれていくような澄んだ歌声。ipodはときどき驚くような良い仕事をする。

 モノレールを降り、ふと気がつく。あ、映画観るの忘れてた。…まあ、いいか。これが「MY LIFE」。

表紙の顔
キーファー・サザーランド。『ザ・センチネル 陰謀の星条旗』上映中。もっともその名を知らしめたのは大ヒットTVドラマ『24』。レンタルビデオ屋でアルバイトしていたとき、開始日にオープン前に列が出来ていたのは後にも先にも『24』だけだった。でも剛山にとってはTVドラマは『ツインピークス』しかないのである。そして、キーファーは映画版『ツインピークス ローラ・パーマー最期の7日間』で捜査官を演っていたのである。だから何だ、という話だが。

ご意見、感想お待ちしております … seek@cinemacity.co.jp 

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