【ネタバレあり】
観ないつもりの方はどうぞお読み下さい。きっと観たくなるから。
季節モノゆえか、DVD発売が最近に珍しく先送りになっていた『ポーラー・エクスプレス』が11月25日、リリースされた。トム・ハンクスとロバート・ゼメキス監督というゴールデンコンビの作品。CGアニメながら、精密なモーションキャプチャ(名付けてパフォーマンスキャプチャ)で、トム・ハンクスの演技を再現。エディ・マーフィーばりに一人五役を熱演した。絵本『急行「北極号」』が原作。リアリストでサンタクロースなんか信じない少年が、空飛ぶ蒸気機関車で拉致されて“クリスマス人民共和国”で洗脳されるお話。
これ、ロバート・ゼメキス監督の作品のファンなら、絶対観た方がいい。だって、過去作品の「誰でも知っている」モティーフが、変奏されて再現されるから。もうそれだけで大興奮ですよ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムスリップした後に炎のわだちが残るところ、『フォレスト・ガンプ 一期一会』の白い羽根が舞うところ、『コンタクト』で宇宙空間を異次元トリップする時ジョディ・フォスターの顔がゆがむところ、などなどが雪の世界で見事に再現される。おお、この床潜りカメラワークは『ホワット・ライズ・ビニース』じゃん!
この(ゼメキス好きにとっては)喜びに満ちた前半から、列車は目的地「クリスマスの国」に到着、怒濤の後半へと向かう。
アメリカですごくよく使われるイメージ(これ国柄なのか?)「プレゼント大工場」がここでも繰り返される。もうむやみに壮大で、オートメーションでものすごい数のプレゼントが製造されて、夢も何もないと思うのは僕だけか。夢さえも論理に基づいていなければならないというのだろうか。
アメリカでは、工場で「奇跡」が作られる。それとも「工場」が奇跡そのもので、なんだって作れるのか?
さあ、そしていよいよクリスマスのカウントダウンが迫る。クリスマスの国の国民のほとんどが、広場に集まってくる。みんな、真っ赤な衣装で。
…いや、僕は本当に声上げて驚いたよ、周りに迷惑にならない程度で(マナーは大切)。だって、真っ赤な衣装きた人で、埋め尽くされているんだもの、広場中が。
イマジン、想像してごらん。きっとあなたも見たことがある、そんな映像を。もう、びくびくですよ。「マス・ゲーム」で絵描いちゃうんじゃないかって。
で、サンタ登場なんだけど、ここメチャクチャにヤバイ。とんでもない熱狂なわけ、国民全員。狂信的ロックファン並。
で、極めつけが「音の鳴らないベル」なのだ。国民たちが振ったりしているんだが、当然なにも聞こえない。このベル、中のベロベロが取り付けてなくて、音は鳴らないように出来ているんだけど(想像)「サンタを信じる者」だけには澄んだ美しい音が聞こえるという。
少年にはもちろん聞こえない。OK。君は問題ない。
…だが、国民とサンタは許さない。超満員のスタジアムの大観衆(比喩)の面前に、少年は引きずりだされ命じられる。
「信じる、と言え!」
おびえる少年。
「信じる、と言え! さればベルの音は響かん!」(超訳)
恐怖の絶頂を迎え、少年はついに崩れ落ちる。
「…っ、信じますっ!」
この瞬間、世界を埋め尽くすほどに響き渡るベルの音が少年の「心」にあふれ、広場に花火があがる。陶酔。そして光輝くような多幸感。
…クリスマスは終わり、少年は、家に戻り、おみやげに「音の鳴らないベル」をもらう。少年は、いまやわき水のように透明な音を出すベルを、妹や友達、家族に聞かせようとする。父親も母親も、もちろん聞こえない。幼い妹と何人かの友達には、それでもその音が聞こえた。
だがしかし、時は流れ、やがて友達も、そして妹も、大人になるにつれてその音が聞こえなくなっていった。
でも、少年、否、すでに大人になっていたが、彼ひとりの心には、そのベルの音色が、少しも曇ることなく、今もまだ、響き続けているという。
そう、今もまだ。 |