ブロークン・フラワーズ

監督■ジム・ジャームッシュ(『デッドマン』)
出演■ビル・マーレイ(『ゴースト・バスターズ』)
     シャロン・ストーン(『氷の微笑』)
     公式HP こちら
(C)2005 Dead Flowers,Inc.

 ついにジム・ジャームッシュ作品がシネマシティで上映出来る喜び。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を初めて観たときのあの衝撃は、多くの映画ファンが共有しているものだろう。
  今作は、ジャームッシュ版『舞踏会の手帳』。差出人不明のピンクの手紙に書かれていたのは「今まで隠していたけど、あなたとの息子が19歳になりました」。 隣人のミステリ好きの強引な押しつけで、主人公ドンは、過去に関係した女性を訪ねて回る旅に出る。
  かつてのプレイボーイが、やはりかつての「花たち」を再訪するのは避けがたく哀しい。この主人公の滑稽味と悲哀を完璧に体現するのはビル・マーレー。5人の花たちに、シャロン・ストーン、ジュリー・デルピー、フランセス・コンロイ、ジェシカ・ラング、ティルダ・ウィンストン。
  ジャームッシュと言えば音楽だが、今回の目玉は隣人に渡されるCDに入っているエチオピアン・ジャズ(割とファンキー)。そしてマーヴィン・ゲイだ。文句なしにカッコいい。
 

 桜の花びらを、幾枚か硯に入れて、墨をする。その出来上がった桜色の淡墨で、山水画を描いたような、これは、そんな映画だ。艶やかで、ユーモラスで、ほどよく枯れている。
  監督のジャームッシュは、トレードマークの黒味(真っ黒な画面)を多用したリズミカルな編集と、細部の「もっともらしさ」の演出によるおかしみと、こだわり抜いた選曲はそのままに、枯れゆく「花たち」の哀しみを見事に立ち上らせる。
 クセはあるがことさらに エキセントリックな登場人物は出てこない。これみよがしなエピソードも語られない。「花たち」は直接的ではなく、家族や、職業や、服装や音楽の趣味によって描写される。つまり「行間を読め」ということだ。「耳を澄ませろ」ということだ。
  そしてビル・マーレイの、年輪を重ねたコメディアンやかくあるべし、という「深みと軽み」の見事さと言ったらどうだ。ただそこにいるだけで、複雑な感情を表現してしまっている。
  当然のカンヌ映画祭審査員特別グランプリ受賞。
  この映画を味わい尽くすためにさっさと50代になってしまいたい。


時間表は>こちら

『アイスエイジ2』(字幕版)(吹替は継続)
『タイフーン』

 

『Limit of Love 海猿』
 



vol.7 長物

 
 長きとかたよる心をきらふ儀也
 〜長い太刀を好むな〜
   (宮本武蔵 『五輪書・風の巻』より)

 武蔵先生の言葉(K−1ファイターじゃない方)。
  要約すると刀の長さを利用して遠くから勝とうとするのは、心が弱いからだという考えと、単純に接近戦だと不利になるという事らしい。さすが先生! わかり易い。確かに佐々木小次郎の刀も長かった(ツバメは斬ってはいけません)。野球だって、バットが長くてもヒットは打てません(外角はチップが可)。Kー1だって接近戦の方が壮絶KOの可能性大(頑張れムサシ!K−1ファイターの方)。
  しかし、ココ、シネマ・ツーではこの流儀が通用しないのです。

 〜長き物ほど好まれる〜

 これが流儀。イメージしましょう(ジョン・レノン)。
  まずは、『ホットドッグ』。長いですね〜。他のあんパンやらサンドイッチやら(どちらもマンつながり)から比べたら、確実に縦長です。ついつい喉を詰まらせるリスクをとってでも、一口で半分位荒々しくいってやりたくなります。豪快に食すべし。
  お次は「チュリトス」。もうなんでしょうか。長さの極み。初めて見た時の衝撃はトム・ウェイツの歌声を聞いた時と同じく忘れられません。うちの劇場はこの「チュリトス」ずいぶんと前から販売しておりました。やはり、ミッキーの国(ロッキーのセコンドじゃない方)で行列になる商品はここ立川でも大人気なわけです。今やポップコーンと並ぶスーパーヒーロー(スターローンとシュワルツェネッガー)。
  しかし、この二つの商品だけだと(『ランボー』と『コマンドー』)「なんだい、そりゃ、映画館ってとこはそういうのが売れるんだろ?」という言葉。
  ハイ、確かに「ホットドッグ」にしても「チュリトス」にしてもアミューズメント界独特の商品。「チュリトス」にいたっては独特を通り越してもはやオンリー1(マッキー風)。デパートやコンビニでは、まずお目にかかれません。
  しかし、ここからが重要です。シネマ・ツーで販売しております。焼きたてパン。館内で焼いてすぐにご提供。焼きたてパン。これまでのラインナップは三十種類を超す。焼きたてパン(スイマセン、CMです)。
  このパンの中でも特に売れ行きがよいのが、長いパン達なんですね。その中でも「ヌスシュタンゲ」名前だけども東欧のキックボクサーをイメージさせる強者。「ヌスシュタンゲ」そのままでも十分にお客さんに人気ですが、これを輪切りにすると「タンギーポップ」なる商品に!(もはや長くな〜い)これまた大人気。他にもツイスト系の(バンドではないです)の長いパン達が大好評。
  何故に長い商品が好まれるのか?これは持論ですが、おそらく映画を観るにあたって、食べやすいんでしょうな。だって縦長な分、暗い場内でもどこから食べ始めればよいか考えなくても大丈夫ですもの。先端から食す。誰も魚肉ソーセージを横から食さないのと同じですね。簡単に食す。何分映画がメインですからね。それで良いんです。

「しかし、宮本先生! 先生の流儀は、いまだ、ここ立川で生きています」
 だって、チビッコが、自分のわきの下にチュリトスを挟んで歩いていましたから。あれは確実に体温計ではなく、『刀』そのものでしたから。

 今回は第5回投票で上映が決まった『ブレイド』について、簡単にご紹介します。俳優が自身の監督作に自分のルーツ(デップは母方の祖父がチェロキー族)の物語を選ぶのはわりとよくあることではありますが、これは同じ題材を選んだケビン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブス』とはまた随分違ったテイストをもっている作品です。
  いわゆる「インディアン」を描くのではなく、あくまでも現在の姿を捉えようというのが今作の意図。人種的 マイノリティとしてヒスパニックと共に生きる暮らしが丹念に描かれます。あらすじは、家族のため、わずか5万ドルの金で、実録殺人フィルムへの出演(もちろん殺される役)を決意する男の物語ということになるのですが、実際の内容はここから想像されるような陰惨さはありません。「核」としているのは家族と父である一人の男との関係です。殺人フィルム出演というのは「命を捧げる」ための仕掛けと考えてもらえばよいと思います。主題は勇気、そしてそれを裏付ける家族への思いです。
  途中「十字路(cross road)で悪魔に魂を売った」ブルース・マン、ロバート・ジョンソンの伝説からの引用があります。ジョンソンの人生やブルース・ミュージックと主人公の生き方を重ね合わせることで、見えてくる意味があるでしょう。
  デップの真骨頂である「アウトサイダーの悲哀」が胸に迫る、真摯な姿勢で作られた秀作です。『パイレーツ〜』の陽気な海賊とは別の表情を見せる彼の一面を、堪能して下さい。  
 
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(C)1997 BRAVE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.


(前回のあらすじ)
  「両手を打てば音が出る。ならば片手にはいかなる音がある喝ーッ?」
 麿赤兒のような和尚から禅問答を挑まれたノッポさん。さあ、どう答える!?

  これは「隻手音声(せきしゅおんじょう)」と呼ばれる公案(禅で問われる問答のこと)で、禅問答の中でももっともポピュラーなものである。さあ、あなたならどう答えるか?
  僕は最初、粋にウェイターを呼ぶ
風情で、指をパチンと鳴らしてはどうか、と考えた。だが、その心は? と問われたならばどうしたものだろう。何かひどく浅はかな生き方が露呈してしまう気がする。「正しいだけ」の小賢しいつまらないヤツ!
  しかし次に思いついた答えは、してやったりと思った。師に向かって片手をかざし、逆の手の人差し指を口に当て、「お静かに…あ、ほら今聞こえたでしょ」
と言うのだ。「聞こえぬ」と言われれば「師とあろうほどのお方が聞こえませぬか」と返し、「聞こえた」と言えばすかさず、「王様は裸だ!」と言う

  でも なんか、先生の質問にこういうイヤな答えするヤツ、クラスにいたなあ。生物の先生に、「人間は現在65億人もいるのだから、一人くらい死なない人間がいてもおかしくないとは思いませんか」と言っていた。心の中で「しかし間違いなくおまえは死ぬべきだけどな」とつぶやいたものだ。

  とりあえず自分の答えを出したので、「ひろさちやのウルトラ禅問答 公案解答集」(四季社)を開く。この本、禅問答のカンニング本を英語に訳したものを、さらに日本語に訳し戻したという、読みやすいものなのだ。これによると、

  答  黙って師の前に片手をさしだす。

  惜しい。非常に惜しい。なぜ僕はしゃべってしまったのか。口は災いの元だと、何度もこれまでの人生で気づいてきたというのに。そしてなぜもう一方の手で、芝居じみたことをやってしまったのか。しかもなんだ! かわいらしいにもほどがあるわ! 恥ずかしい!

  禅問答は深い。これは本には書いてないが、思うに、片手もただぼんやり出してもダメなのではないか。武道の構えのようなもので、型が合っていればいいというものではあるまい。眼光鋭く相手をにらみつけ、丹田呼吸(へその下3センチあたりを使ってする呼吸法)で、異様にゆっくり息を吐きながら、合わせて手を差し出していく、といったようなプロセスが問われるに違いない。動きは少ないが、極度の緊張ゆえ、汗がだらだらと流れ落ちるほどである。…うん、きっと、そうだ。
 
  たまには映画でなく本の紹介でも、と思ってわざわざ2週にかけて書いてしまったが、「ひろさちやのウルトラ禅問答 公案解答集」は個人的に
はここ何年かで一番面白かったので、ぜひおすすめしたい。上の例にあげたものなどまだ序の口で、このあとに続く問いとその答えたるやすさまじいのだ。師匠がなんと問うても「無ーッ!」と絶叫し続けるとか、「そんなこと聞くな、アホか!」と逆ギレするのが正解とか、こちらの想像をはるかに上回ってくれる。しかも肝心な「なぜそう答えるのか」が一切書かれていないので、不条理度アップ、読んでもおかしいだけで禅の教えについては一切わからない無為っぷりがすごくいい。¥2,940と少しお高いが、迷うなかれ、これは買いだ。    

表紙の顔 …

ピル・マーレー。『ブロークン・フラワーズ』主演。近頃インディーズ系監督の間でひっぱりダコだが、『ゴースト・バスターズ』の後は、鳴かず飛ばずの時期が続いた。関係ないが『ブロークン〜』では役名が『マイアミ・バイス』の遊び人風俳優の名前に似ているというどうでもいいネタが個人的にグッド。
P.S.…「マシュマロマン」はデレク・マロンフィールドによるものです。


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