ニュー・ワールド

監督■テレンス・マリック(『シン・レッド・ライン』
出演■コリン・ファレル(『アレキサンダー』)
     クリスチャン・ベール(『マシニスト』)
     公式HP こちら
(C) MMV NEW LINE PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 ディズニーアニメ『ポカホンタス』でも語られたアメリカ建国期の神話化された物語を、壮大に描く映像詩。ネイティヴ・アメリカンの一族の王の娘、ポカホンタスとイギリスからの入植者ジョン・スミスとの美しきロマンスを描く。
 監督は『地獄の逃避行』『天国の日々』のたった2作で伝説となったテレンス・マリック。20年間沈黙したが『シン・レッド・ライン』で復活。そこから「たった」7年で今作を作り上げた。
 ジョン・スミスには『アレキサンダー』で主演を演じたコリン・ファレル、ポカホンタスには、若干15歳でヒロインの座を射止めたクオリアンカ・キルヒャー。野性味を残したみずみずしさが印象的。また激やせ男クリスチャン・ベールが主演を喰うほどの働きを見せる。
 作品を彩る音楽は『タイタニック』のジェームズ・ホーナー。観客は開幕と共に、あふれるほどに流れ出る調べに包まれる。絵筆たるカメラマン、エマニュエル・ルベツキはこの作品でアカデミー賞にノミネートされた。
 単純に物語として観ると失敗する。この映画は光を使って紡いだ「詩」であると捉えるべきだ。
 

 映画の「エッセンス」ってなんだろう? 映画があり続ける理由ってなんだろう?
 DVDやインターネットで簡単にソフトが手に入り、安価で大きなスクリーンや5.1チャンネルのサウンド・システムがそろえられるのだから、映画を映画館で観る必要なんか、本当にあるんだろうか?
 多くの人は「無い」と答えるのかも知れない。それは、コーヒーを家で淹れられるのに、カフェに飲みに行くのと同じで、ただ「場所」を求めているだけだ、と。
 だが『ニュー・ワールド』のこの美しさを表現できる液晶スクリーンは、残念なことにまだ発明されていない。いや、発明されることは絶対にない。それは、どれだけ印刷技術が上がっても、直筆の絵画に到達することはないのと同じだ。
 カメラマン、ルベツキは驚くほど繊細な撮影をしている。アメリカの場面では、「光」を使って「影」を描き、イギリスに渡ってからは「影」を使って「光」を描く。衣裳デザインとのパーフェクトなハーモニーには、思わず息をのむ。髪が、光を孕んで揺れる。 なぜメキシコ出身のカメラマンが、これほどまでにヨーロッパの「画」を撮れるのか不思議なくらいだ。
 異文化の壁を越えた恋愛という題材から、昨今の911以降テーマに収斂されるかと予想したが、もう一回り大きな腕で包み込むような作品になっている。


時間表は>こちら

『子ぎつねヘレン』
『ナイト・ウォッチ』(PG-12)

 

『ブロークン・フラワーズ』(PG-12)
『小さき勇者たち ガメラ』
『キャッチ ア ウェーブ』 『戦場のアリア』



vol.7 憂国

 
 ガメラが好きです。

 亀はあまり好きではないのですが、亀が大きくなったものがなぜガメラなのか?などの諸説とかは関係なくガメラが好きです。
  ガメラが敵怪獣に痛めつけられながらもじっと大きな瞳に力をためて、反撃の機会をうかがっている、その姿が怪獣なのに妙に等身大に見えてしまって、目頭が熱くなってしまうのです。理由はわからないけれど人間の楯になって戦うガメラがもう仲間にしか見えないんですね。
  いよいよ 29 日から公開の『小さき勇者たち ガメラ』ではガメラがどうして生まれて、どこからやってきて、などのルーツ的説明もなければ、推測にあたる下りさえありません。人間の利害と関係なく目の前の怪獣が自分の敵であるがゆえに怪獣同士が戦うという図式もある怪獣映画ジャンルの中で、良い者が悪い者を駆逐する単純なことをあえて王道にする上では、ガメラがなぜ、どうしてということに対する解答は必要なくガメラが小さな体で(今回のガメラちょっとちっちゃいんです)我々人間のために戦ってくれる現実だけが必要なのです。
  今回のお話は少年がガメラを卵から返すところから始まり、短い間で成長したばかりのガメラは、突然あらわれて建物を壊して人をなぎ倒し、人間まで喰らう恐ろしい怪獣ジーダスと戦うことになるのです。少年は人間にすれば赤ちゃんとしか思えないガメラを同じ子供だという目線で追いかけ、ガメラの助けになろうとします。その思いは少年が知らない子供たちにエネルギーのように伝わり、それが感動のラストにつながってゆくのです(あー、書きながら思い出したらウルウルしてきました)。

 映画を見終わったあと、 4 才位の男の子がお父さんにぼそっと一言話しかけてました。「パパ、ガメラ強かったね。」これでいいんでしょうね。子供が小さい頃に強い者に憧れを抱くひとつのきっかけが怪獣映画だったのかな? おととし終焉を迎えたゴジラシリーズの後期の作品群たちは、作り手の皆さんもちろん一生懸命映画を面白くしようと考えてのことでしょう、いろいろひねりの入った物語が添えられていましたけど、どこか主役の怪獣差し置いてお話だけをメインディッシュ扱いになっちゃってないかの節もありました。そんなことすると怪獣映画が子供に伝わらなくなってしまうのではないか? 純粋であるがゆえに怪獣映画。そんなことをガメラに教えてもらったような気がするのです。その怪獣映画は子供たちだけのものではありません。純粋なものを求めつづける大人たちのものでもあるのです。ガメラありがとう。

  そして「純粋であるがゆえに」というところから始まる 1 本の短編映画があります。三島由紀夫監督・主演作『憂国』。物語はシンプルですが壮絶です。昭和 11 年、「 2.26 事件」が勃発時に、新婚であるがゆえに、仲間から決起に誘われなかった 1 人の中尉が、皮肉なことにかつての親友達の鎮圧を命じられる立場になってしまい、仲間もそして国も裏切ることなく純粋なままでいるための究極の選択がワーグナーの音楽が流れる中、セリフもなしに展開します。

 武山と最愛の妻は最後の愛を交わし、武山ははらわたをひきずり出しながら壮絶な割腹自殺をし、妻は苦しみながら事切れる夫の最後をゆっくりと見届けてから自らもノドを突いてその後を追う様が物語のすべてです。いくらフィクションであってもこの想像を絶する儀式は見る人によっては正視を拒む要素が当然あります。三島由紀夫氏が自費を投じてまで作ったこの 28 分の映画、その後三島氏自身がほんとうに割腹自殺をしてしまったが故に、映画の扱われ方が大きく変わってしまい 30 年以上封印されてしまうという憂き目にあったものなのですが、切腹、自害という行為。その当時、三島氏がこういう行為を映画のモチーフにしたということは常人には一見理解しがたい考え方かも知れませんが、映画では当人たちにとっては苦悩を解決するための純粋な手段として、それ以上もそれ以下もないものとして、私たちの前に提示されるのです。

 食べ物にしろ、芸術にしろ、不純物だらけのものがあふれている中で純粋でいることを保つことがむずかしくなったこの現代でこの映画が見られるようになったことは、大きな意義がある反面、皮肉でもあるのです。

 文学・とりわけ映画に対しての造詣が深かった三島氏がこの現代にもいたとしたら、純粋にここまで一つごとと向かい合うことが果たしてできるのであろうか? 三島氏の生きざまよりも、「憂国」という映画がつくられた時代に思いを馳せながらこの映画を見ていると、「国を憂う」というタイトルがついたこの映画の思いと、ガメラを通して私が怪獣映画を憂いた思いは重ならないものか?そんな感傷にひたってしまった春でした。

 誰にでもすすめられる映画ではありませんが、美しい映画であることは確かです。「キネカ大森」にて上映中です。

また、映画館で会いましょう!
『小さき勇者たち ガメラ』
監督:田崎竜太
出演:富岡涼/夏帆/津田寛治
寺島進/奥貫薫/田口トモロヲ
製作プロダクション 角川ヘラルド映画
配給:松竹 4 月29日よりロードショー
(C)2006 「小さき勇者たち〜 GAMERA 〜」製作委員会
『憂国』
1966年度作品
原作・脚色・製作・監督 : 三島由紀夫
製作 : 藤井浩明
演出 : 堂本正樹

出演 三島由紀夫/鶴岡淑子

4月28日DVDリリース
【価格】6300円(税込) 【品番】TDV16114D
発売元:東宝 販売元:東宝  (C)1966 Iichiro Mishima

 決まりました、第5回シネマカウンシル「ジョニー・デップの別の顔」、選出作品は『ブレイブ』! 予想を裏切る結果でしたが、これは嬉しい結果でした。なぜかって、『ブレイブ』インディーズの実にマイナーな映画です。それがなかなかにヒットした『スリーピー・ホロウ』を打ち負かしたのです。こういう映画をご覧になりたい方が、「テアトルシネマ」さんの「Club C」ではなく、シネコンであるシネマシティの「シネマシティズン」の中にいらっしゃるということが嬉しいです。これからもどんどん攻めますよ、攻めの姿勢でいきますよ。
 
  そして次なる上映は『サイドウェイ』です。ここでSEEK読者様に特別に速報! 『サイドウェイ』初日に限り、ワインマニアである弊社社長より(一口だけ)ワインのプレゼントを企画しております。映画に登場するブドウ品種「ピノ・ノワール」と「カベルネ・ソーヴィニョン」を(一口だけ)飲み比べていただこう、という試みです! ただでさえ特割料金での上映にも関わらず、この大盤振る舞い!(一口だけ)
  詳細は、後日発表します。お楽しみに!

シネマカウンシルって何?という方は >>こちら
『ブレイブ』 DVD発売中 ¥3,990[期間限定]
発売・販売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)1997 BRAVE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.


 空気が凍結してしまいそうなほど、張りつめた板張りの和室は、障子から洩れる白々しい光によっていっそう薄暗く、柱や天井の木の深く色づいた様は、染み込んだ「時」の量で容赦なく威圧してくる。
  そこに丸禿の荒々しい髭を蓄えた魁偉なる師と、黙したまま正座で対峙する。さあ、準備は良いか。始まるぞ、禅問答が。

  桜散って、若葉萌える頃、そろそろ五月病の気配が漂い始めている皆さんに紹介したい禅問答。まともには解けない難問珍問にとんちで答える禅問答。脳を鍛えるならゲームじゃなかろう禅問答。気がつけば五月病どこへやら、次なる珍問に心躍る自分がいるというわけだ。

 師、突如かっと眼を見開き、片膝立ちに立ち上がり、大きく腕を開くと、真ん中でバチーンと手を叩く。静寂の部屋の隅々まで震える轟音。びくり、と縮み上がった身体に、間髪入れず師が問う。
「両手を打てば音が出る。ならば片手にはいかなる音がある喝ーッ?」
 師の貌(かお)は仁王のそれだ。だがしかし、ひるんでいる場合ではない。
 考えよ、さぁさ、考えよ!

 答えは、来週号じゃ。

表紙の顔 …

ジム・ジャームッシュ監督。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で世界中の映画マニアを唸らせたインディーズ映画の雄も、ついにシネマシティにて新作『ブロークン・フラワーズ』上映。ボブ・マーレーとの相性の良さは『コーヒー&シガレッツ』で証明済み。独特の銀髪リーゼントは染めているのではないらしい。


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