ガメラが好きです。
亀はあまり好きではないのですが、亀が大きくなったものがなぜガメラなのか?などの諸説とかは関係なくガメラが好きです。
ガメラが敵怪獣に痛めつけられながらもじっと大きな瞳に力をためて、反撃の機会をうかがっている、その姿が怪獣なのに妙に等身大に見えてしまって、目頭が熱くなってしまうのです。理由はわからないけれど人間の楯になって戦うガメラがもう仲間にしか見えないんですね。
いよいよ 29 日から公開の『小さき勇者たち ガメラ』ではガメラがどうして生まれて、どこからやってきて、などのルーツ的説明もなければ、推測にあたる下りさえありません。人間の利害と関係なく目の前の怪獣が自分の敵であるがゆえに怪獣同士が戦うという図式もある怪獣映画ジャンルの中で、良い者が悪い者を駆逐する単純なことをあえて王道にする上では、ガメラがなぜ、どうしてということに対する解答は必要なくガメラが小さな体で(今回のガメラちょっとちっちゃいんです)我々人間のために戦ってくれる現実だけが必要なのです。
今回のお話は少年がガメラを卵から返すところから始まり、短い間で成長したばかりのガメラは、突然あらわれて建物を壊して人をなぎ倒し、人間まで喰らう恐ろしい怪獣ジーダスと戦うことになるのです。少年は人間にすれば赤ちゃんとしか思えないガメラを同じ子供だという目線で追いかけ、ガメラの助けになろうとします。その思いは少年が知らない子供たちにエネルギーのように伝わり、それが感動のラストにつながってゆくのです(あー、書きながら思い出したらウルウルしてきました)。
映画を見終わったあと、 4 才位の男の子がお父さんにぼそっと一言話しかけてました。「パパ、ガメラ強かったね。」これでいいんでしょうね。子供が小さい頃に強い者に憧れを抱くひとつのきっかけが怪獣映画だったのかな? おととし終焉を迎えたゴジラシリーズの後期の作品群たちは、作り手の皆さんもちろん一生懸命映画を面白くしようと考えてのことでしょう、いろいろひねりの入った物語が添えられていましたけど、どこか主役の怪獣差し置いてお話だけをメインディッシュ扱いになっちゃってないかの節もありました。そんなことすると怪獣映画が子供に伝わらなくなってしまうのではないか? 純粋であるがゆえに怪獣映画。そんなことをガメラに教えてもらったような気がするのです。その怪獣映画は子供たちだけのものではありません。純粋なものを求めつづける大人たちのものでもあるのです。ガメラありがとう。
そして「純粋であるがゆえに」というところから始まる 1 本の短編映画があります。三島由紀夫監督・主演作『憂国』。物語はシンプルですが壮絶です。昭和 11 年、「 2.26 事件」が勃発時に、新婚であるがゆえに、仲間から決起に誘われなかった 1 人の中尉が、皮肉なことにかつての親友達の鎮圧を命じられる立場になってしまい、仲間もそして国も裏切ることなく純粋なままでいるための究極の選択がワーグナーの音楽が流れる中、セリフもなしに展開します。
武山と最愛の妻は最後の愛を交わし、武山ははらわたをひきずり出しながら壮絶な割腹自殺をし、妻は苦しみながら事切れる夫の最後をゆっくりと見届けてから自らもノドを突いてその後を追う様が物語のすべてです。いくらフィクションであってもこの想像を絶する儀式は見る人によっては正視を拒む要素が当然あります。三島由紀夫氏が自費を投じてまで作ったこの 28 分の映画、その後三島氏自身がほんとうに割腹自殺をしてしまったが故に、映画の扱われ方が大きく変わってしまい 30 年以上封印されてしまうという憂き目にあったものなのですが、切腹、自害という行為。その当時、三島氏がこういう行為を映画のモチーフにしたということは常人には一見理解しがたい考え方かも知れませんが、映画では当人たちにとっては苦悩を解決するための純粋な手段として、それ以上もそれ以下もないものとして、私たちの前に提示されるのです。
食べ物にしろ、芸術にしろ、不純物だらけのものがあふれている中で純粋でいることを保つことがむずかしくなったこの現代でこの映画が見られるようになったことは、大きな意義がある反面、皮肉でもあるのです。
文学・とりわけ映画に対しての造詣が深かった三島氏がこの現代にもいたとしたら、純粋にここまで一つごとと向かい合うことが果たしてできるのであろうか? 三島氏の生きざまよりも、「憂国」という映画がつくられた時代に思いを馳せながらこの映画を見ていると、「国を憂う」というタイトルがついたこの映画の思いと、ガメラを通して私が怪獣映画を憂いた思いは重ならないものか?そんな感傷にひたってしまった春でした。
誰にでもすすめられる映画ではありませんが、美しい映画であることは確かです。「キネカ大森」にて上映中です。
また、映画館で会いましょう!
『小さき勇者たち ガメラ』
監督:田崎竜太
出演:富岡涼/夏帆/津田寛治
寺島進/奥貫薫/田口トモロヲ
製作プロダクション 角川ヘラルド映画
配給:松竹 4 月29日よりロードショー
(C)2006 「小さき勇者たち〜 GAMERA 〜」製作委員会
『憂国』
1966年度作品
原作・脚色・製作・監督 : 三島由紀夫
製作 : 藤井浩明
演出 : 堂本正樹
出演 三島由紀夫/鶴岡淑子
4月28日DVDリリース
【価格】6300円(税込)
【品番】TDV16114D
発売元:東宝 販売元:東宝
(C)1966 Iichiro Mishima
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