プロデューサーズ

監督■スーザン・ストローマン
製作・作詞作曲■メル・ブルックス
出演■ネイサン・レイン(『マウス・ハント』)
     マシュー・ブロデリック(『ファミリー・ビジネス』)
     ユマ・サーマン(『キル・ビル』)
     公式HP こちら
(C) 2006 Sony Pictures Entertainment.
(J) Inc.All Rights Reserved.

 大御所コメディ監督メル・ブルックスのデビュー作にして傑作の同タイトル映画のミュージカル化。もともとはブロードウェイの舞台だったものを映画にした。
  メル・ブルックスといえばベタでオヤジなギャグがひたすら繰り返されるわけだが、大枠で持っているパロディ精神のキラメキが素晴らしく、圧倒されてしまう。
  本作はダメ演劇プロデューサーが、ダメ会計士と組んで、大失敗ミュージカルをわざと製作して一山当てよう(もちろん詐欺)とたくらむ物語。そのミュージカルの題名は「春の日のヒトラー」。
  女性が監督していることもあって、ギャグはほどよくマイルドに、オリジナルより約40年が経って、政治風刺もまろやかになったことで、口当たりの良い出来になっている。
  ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリックの芸達者ぶりを存分に堪能できる、楽しい作品。ユマ・サーマンもむやみにデカいが、性に開放的なスウェーデン娘(ネタが古すぎて若い人には意味不明だろう)をセクシーに演じて、魅せる。

 

 世界中のあまねく作り手は傑作を目指す。
  それをくるりとひっくり返してみせる設定だけで、この映画は勝ちだ。皮肉と、情熱への賛歌にニヤリとさせられる。これぞ「風刺」というものだろう。
 今作ではそこにさらにナチス批判を盛り込んでみせる。ふざければふざけるほど、そのエネルギーは蓄積されて、ステージのシーンで見事なカリカチュアに昇華される。「劇場型政治」のあまりにピュアな具現!
 この「仕掛け」のせいで、ディテールの不満も吹き飛んでしまう。コメディにはこういう「仕掛け」が重要だ。
  似たような「仕掛け」を持つ作品に、ウディ・アレン監督『ブロードウェイと銃弾』がある。芝居を打つ資金集めのために、嫌々主演に据えたのはギャングの愛人。愛人には見張りのチンピラが張り付いているが、稽古のとき、こともあろうにこのチンピラが内容に口出しをしてくるのだ。しかし、その指摘は的確で、芝居はどんどん良くなっていく。
  我が日本には三谷幸喜脚本『笑の大学』がある。これは出来たら「芝居版」(DVDあり)をご覧頂きたい。


時間表は>こちら

『THE有頂天ホテル』(通常版)
『ブロークバック・マウンテン』
『南極物語』(字幕版)
『機動戦士ZガンダムV』

 

『遠い空の向こうに』
『クレヨンしんちゃん』  『名探偵コナン』
『連理の枝』 『県庁の星』(日本語字幕版)
『ナニー・マクフィの魔法のステッキ』(吹替版)



vol.7 SONY

 
 先日、経済誌で「政権交代1年 ソニー 未来は見えたか」という特集を読みました。ということで、今回はソニーの話。
  ソニーといえば、まずは「トリニトロン」「ウォークマン」「技術のソニー」といった、創業者、井深さんと盛田さんのイメージが強くあります。その後しばらく前までは「VAIO]や「プレイステーション」といった、何かこう、未来を予感させてくれるイメージの会社でした。経営トップの出井さんのイメージね。ちなみに、日本の大きな会社の社長さんって、ワタシの場合、トヨタの奥田さんみたいな人が典型的なイメージとして浮かんでくるのでありますが、出井さんのルックスとか、話っぷりは、図抜けてかっこよく、なんだかインターナショナルな雰囲気で、ちょっと憧れておりました。
  話はそれましたが、どちらにせよ、ソニーといえば、くくりとしては、「松下」とか「シャープ」と、薄型テレビのシェアを競ってます、みたいな会社だと考えます、やっぱり。ところが、去年から、一番偉い人は、映画業界の人、なんですよね。アメリカでソニーの映画事業を軌道に乗せ、MGMの買収を成功させた、ハワード・ストリンガーさんは、ソニー・ピクチャーズの一番偉い人でもあるわけです。
  この人事が決まった時はちょっとびっくりしました。テレビともオーディオともゲーム機とも関係のない、映画の人、が世界のソニーのトップなわけです。確かにソニーが映画を制作したり配給したりしているのは知ってはいたわけですが、どこか関連事業みたいな感じで捉えていたもので、一番偉い人がそこから出てきたことは、軽い衝撃です。外国人、というばかりでなく、です。この国は、お菓子の会社のトップからコンピューターの会社のトップになったりするアメリカとは、ちょっと違う国だとどこかで思っていましたし、国際企業っていったって、日本の家電メーカーのひとつ、なんていう固定観念を持っていたので、進んでいるところはとことん進んでいるのねぇ、と実感した次第です。
  そしてそんなソニー・ピクチャーズの公開が待ち遠しい大作といえば、『ダ・ヴィンチ・コード』。楽しみにしている方も多いことでしょう。映画化決定の前に、原作本をかなりヴィジュアル的に想像しながら読んだ者としては、あの予告編の雰囲気に、そうそう、こういう感じの映像を想像してたんだよ、トム・ハンクスも最初はイメージ違うとか思ったけど、案外イけてるじゃん、などと不遜な考えを抱き、とても期待しています。大ヒットしたら、ソニー復活、という話にも勢いがつくのではないでしょうか。そして、公開が終わってしばらくすると、薄型大画面テレビ「ブラビア」で、「ブルーレイ・ディスク」の『ダ・ヴィンチ・コード』を自宅で見たり、「プレイステーション3」で『ダ・ヴィンチ・コー』」の映画並みにリアルな映像のゲームソフトを楽しんだり、なんてことになるのでしょうしね。そうすれば、「ソニーの未来」ってやつも見えたりするのかもしれませんね。
  ソニーの未来を映画が握っているなんて、ほんとに時代は変わりました。

 始まりました第5回シネマカウンシル投票。今回はスタートから票の入り方が違いますよ! 恐るべしジョニー・デップ。そう、テーマは「ジョニー・デップの別の顔」です。候補作は『ブレイブ』『夜になるまえに』『スリーピー・ホロウ』の3本。
  もっとメジャーな作品を本当は集めるつもりだったんですけど、なかなかうまくいきませんでした。『エド・ウッド』とか『ラスベガスをやっつけろ!』とか『シザー・ハンズ』とか、どれもダメで。
  最初は『スリーピー・ホロウ』ではなく『耳に残るは君の歌声』が候補に挙がっていたのですけれど、だいたい主演作じゃないし、あまりに華が(知名度も)ないだろうということで、せめてということで、インディーズ作品ではないものを選びました。
  しかしッ! この意外な展開ッ! レース序盤まさかの『ブレイブ』が独走態勢に。作品紹介で「権利切れも近く、スクリーンで紹介できるのはこれが最後の機会になるかも?」と書いたのが影響したのでしょうか? 波乱含みの展開は必至。日々動向から目が離せません。
  さて、そして第3回選出の『遠い空の向こうに』が15日(土)からスタートです。公開当時の規模から考えてスクリーンでご覧になられた方は少ないんじゃないでしょうか? NASAの一人のエンジニアの自伝。少年の思いの強さに胸が熱くなる傑作です。見逃さないようにして下さい!

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『ブレイブ』 DVD発売中 ¥3,990[期間限定] 発売・販売:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)1997 BRAVE PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
『夜になるまえに 特別版』 DVD発売中 \4,935(税込) 発売:アスミック
(C)2000 EL MAR PICTURES,LLC All Rights Reserved
『スリーピー・ホロウ』〈DTS EDITION〉 DVD発売中 ¥3,800(税抜) 発売元:日本ヘラルド映画
『遠い空の向こうに』 … DVD発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン レンタル中  


 イヤフォンをしながら、街を歩く。
  映画が始まる時間まで、まだしばらくある。

  気の向くに従って、あてなく彷徨う。カフェ、ドラッグストア、靴屋。TVのチャンネルを選ぶときのように、無秩序に連なっていく店たち。
  その騒がしさに、真面目に働くことを止めてしまった視覚に代わって、ふいに嗅覚が刺激を送ってきた。

  ――――― これは、石けんの香りだ。

  つられて頭がその方に向く。目前に広がったのは、美しい欧州風の意匠の、数え切れないほどの小瓶だ。胸がざわつき始める。
  オリーブ・オイルやシアバターを使った、シャンプーやコンディショナーやフェイシャルウォーターやパックが所せましと陳列してある。そのどれも、なんて素敵なラベルなんだろう! その店の名は「L'OCCITANE」。

  なぜか昔から、小さくて美しいものが好きなのだ。例えば紅茶を淹れる器具たち。例えば世界中の硬貨たち。

  この様々な色形の瓶や包みは、視覚的に優れているばかりか、芳醇な香りを放ち、さらには肌や、髪や、爪や、唇を、健やかにしてくれるのである。非の打ち所がないとはこのことだ。
  特に我が目をひいたのは、いくつかのフレグランスのある小振りの化粧石けんだった。ローズ、ラヴェンダー、ヴァーベナ、クレメンタイン…。
  ああ、こんなにたくさんあったら、どれにしたらいいか、迷っちゃうわ。ラヴェンダーは外せないし、スウィートレモンなんて素敵じゃない。いっそのこと7つ買って毎日違う香りを楽しもうかしら。

  だがしかしその時、我が精神に天上より禅寺の和尚のような怒声が響き渡ったのである。
「貴様ッ、オカマかーっ!」
  はっと我に返り、店内を見回してみれば僕一人ではないか。男性は、僕一人ではないか!
  両手にあふれるほどの石けんを抱え、何をやっているのだ僕は。店中の女たちの「見ざる視線」が突き刺さる。
  すぐさま色とりどりの包みを元に戻すと、僕は手近にあった素朴なオリーブ石けんを2つ、むんずと掴んだ。男は、これである。華美な装飾なき、軍服の色調のオリーブ石けんこそ、男子の本懐である。1つだけだとケチに見られるといけないから2つなのである。さあ、今こそあなどっていたに違いない店員の女子(おなご)に、目にもの見せてやる。
  僕は一切の迷いなく、確固たる歩みでレジに向かい、荒々しい素振りでオリーブ石けん2個を会計台
置く。
「ご自宅用ですか?」
「無論だ」
 …きまった。明治の男や、さもあらん。 レジの小娘が我が偉容に完全に気圧されているのがわかる。
  手渡された袋は素敵だったが、表情をゆるめることなく、店を出た。
 
  さあ、そろそろ映画の時間だ。
  『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』を観る。メキシコ国境辺りの、男たちの友情の物語。登場するは、荒れ果てた大地、そして馬だ。

  人間、大切なのはバランスである。
 

表紙の顔 …

ベイビー・フェイス。一時期のアメリカの音楽チャートを席巻した名プロデューサー。「Boyz U Men」「TLC」などを手がけた。90年代には彼のスムースで美しいメロディに酔いしれたものだ。しかし、ネタがわかりづらいよ。原口画伯。


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