おとうと



(C)2010 「おとうと」製作委員会


監督・脚本■山田洋次(『母べえ』)
音楽■富田勲
出演■吉永小百合/笑福亭鶴瓶
■■■蒼井優/加瀬亮/加藤治子
配給■松竹





 これこそが日本映画であると、世界中に誇りたくなる名作がまたひとつ生まれた。

 若くして夫を亡くし、女手ひとつで娘を育ててきた小さな薬局を営む女性と、まるで正反対にだらしない弟をめぐる「家族」の物語。姉に吉永小百合、弟に笑福亭鶴瓶という同じく山田洋次監督による『母べえ』に続く絶妙なコンビ。
 そして脇を固めるのが娘役の、若手女優では頭一つ抜きんでる才能を持つ蒼井優、やがてその恋人となる近所の大工に加瀬亮。この二人の仕事ぶりは傑作『息子』の永瀬正敏、和久井映見のカップルに勝るとも劣らぬ見事なもの。

 久しぶりの現代劇だが、山田監督にとってはむしろこっちが本職。『男はつらいよ』シリーズをほうふつとさせる設定だが、ご本人もそのつもりか、劇中で『男はつらいよ』が引用されるのが可笑しく、嬉しい。

 よく温めた石が放つじんわりとした熱のように、おかしみが、やさしさが、そしてかなしみが、胸に染みこんでくる。
 今上映されている中で一番ご覧いただきたい作品。
 とりわけ、本当の邦画をよく知らない、まだ若い方に。

 
 




 伝わってくるのは「圧力」。

 ショッキングな展開、派手な見せ場など一切ないにも関わらず、それが連続するどんな映画より心をとらえて離さないのは、画面から伝わってくる芝居や、映像や音楽の力なのだ。つまり「映画の力」である。
 妙に衒うことなく、王道を誠心誠意進む。そういう作品が、果たして日本映画に今、何本あるだろう?

 奇矯なキャラクターではなく、地に足の付いた人間の役を与えられて、役者たちは輝く。小手先の技術ではなく、知性と経験と才能をこそ問われる作品ゆえに、真剣な姿勢がひしひしと伝わってくる。
 山田作品は、役者の持てる美質を最大限に引出す。例えば『たそがれ清兵衛』の宮沢りえ、『武士の一分』の木村拓哉、『母べえ』の浅野忠信を思い出していただきたい。いずれも主演スターだが、あれほどに美々しい姿は、他作品では望むべくもない。

 そうして引出された鶴瓶師匠の滋味、吉永小百合の品格、蒼井優の純真、加瀬亮の実直に、観客はかく生きたいものだ、という憧れが生まれて、見終わったあとすぐには到底おさまらぬ感激を抱きながら、いつもよりほんの少しは、誰かに優しくしようと帰途につく。

 世界には悪意のほうが総量が多いのかも知れない。だがしかし善意も確かにあることを信じさせられる「圧力」が、今作にはある。

 
 
  〜2/5(金)


アバター
2D 字幕版
(3Dは継続)

カールじいさんの
空飛ぶ家
3D吹替/2D字幕
2D吹替は継続


釣りバカ日誌20
ファイナル


彼岸島


ONEPIECE FILM
THE STORONG
WORLD

 


キャピタリズム
マネーは踊る




 
  〜2/10(木)
 


今度は愛妻家









 
    2/6(土)〜
 


50歳の恋愛白書
5日(金)から


インビクタス
負けざる者たち
5日(金)から


トイストーリー1&2
3D 吹替版


涼宮ハルヒの消失


抱擁のかけら
PG-12

 
    2/13(土)〜
 


交渉人
THE MOVIE
11日(祝)から


バレンタインデー
12日(木)から






 
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申し訳ありません。
本日(2/3)大変大きな上映トラブルがございまして
その対応に追われコラムまで手が回りません。
来週こそは必ず書きます。 
剛山剛次郎



 なにやら誤解があるようだ。
 剛山は、自分の好きな仕事ばかりやっていて「なんの悩みもなく楽しそうだ」と思われているのだ。

 そんなはずがないではないか。
 誰だって「社会にでると、学生のときとは比べものにならないくらい厳しい」と教わってきたはずだ。僕においてもそれはまったくその通りである。大いなる苦痛の砂漠のなかに、ほんの一粒輝く貴石のような「達成感」がある。この一粒だけを取り上げて書くから、誤解が生まれる。

 なので今日は「茫漠たる砂漠の一端」を記してみたい。

 休日。
 されど、好き勝手に過ごすわけにはいかない。出勤日ではなかなか叶わない街へ出ての調査がある。
 もちろん休日だから交通費も必要経費も出ない。自腹である。だが常にインプットを続けなければ、アウトプットが枯渇してしまう。しかも1をインしたところで、アウトも1となるわけではない。むしろイン10でアウト1あれば良いほうだ。
 何か「新しいこと」をしていこうとするならば、むしろ勤務時間以外に何ができるかが勝負といっていい。旅行もデートもこっちからお断りだ。

 この日、向かったのは池袋の映画館「シネマサンシャイン」。
 現在ここで、新たな時代の到来を告げるような上映が行われているのである。
 ガリガリ使える普段使い率ナンバー1の万年筆RAMYのサファリと、相性のいいMIDORIのMD NOTEBOOKを携えて、いざ戦場(仕事場)へ。神経を研ぎ澄まし、チケット窓口に歩を進める。

 「すいません『完全なる飼育 メイド、for you』(15禁)大人1枚ください」
 公式HP http://maidforyou.jp/

 学生諸君、これが社会の厳しさである。
 時に大人は、モラルや羞恥心すら捨て去らねばならない。「正しいこと」が必ずしも正解ではないのが現実だ。
 はっきりと断言せねばならないが、剛山はメイド服なんかに萌えたりしない。しかも、それを脱いでしまうとは何事か。いやさらに、あらわになった乳房が3Dで飛び出してくるだなんて、品性下劣たることはなはだしい!

 SEEK読者の方ならご存じであろうが、剛山はアレクサンドル・ソクーロフ監督やケン・ローチ監督を愛好する、映画に高い芸術性をこそ求める堅物である。その剛山が、仕事ゆえに「世界初3D濡れ場」を観るために休日をつぶすわけである。我ながら凄まじいまでの映画への情熱である。

 ああ、もしこの時間が自由に使えたなら、サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」を再読できたやも知れぬ。あるいは東京都美術館にてラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」を眼前にしていたやも知れぬ。

 ところが今、3Dグラスの向こうに揺れるのはFカップ。
 こういう地味な犠牲の積み重ねだけが、真の栄光を呼び込むためのただ一つの道といっていい。
 若人よ、辛くとも心折らず、武将・山中鹿之介にならってともに月に祈ろう。

 「我に艱難辛苦を与えたまへ」

 肝心の映画の内容は、まあ予想の範囲に収まるものであったが、たわわな双丘は、見事に次代を告げるにふさわしい隆起を誇っていた。

 夜の砂漠を煌々と照らす月影ほどに、未来は明るい。
 

今週の顔

モーガン・フリーマン、ではなくネルソン・マンデラ元南アフリカ共和国大統領。
巨匠クリント・イーストウッド監督期待の新作『インビクタス 負けざる者たち』2月5日スタート。 イーストウッド監督の手腕たるや、衰えることを知らない。

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