ブロークバック・マウンテン

監督■アン・リー(『グリーン・デスティニー』)
出演■ジェイク・ギレンホール
     (『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』)
     ヒース・レジャー(『ブラザーズ・グリム』)
    公式HP こちら
(C)2005 Focus Features LLC/WISEPOLICY

 アカデミー作品賞は逃したものの、数々の有力映画賞を総なめした今年度最大級の話題作。「男らしさの象徴」カウボーイ2人の、男同士の禁断の愛を描く。
  主演は、今最も若手で輝いているジェイク・ギレンホールと、作品ごとに全く違う顔を見せるオーストラリア出身の実力派、ヒース・レジャー。それぞれの妻役に、『プリティ・プリンセス』アン・ハサウェイと『ランド・オブ・プレンティ』ミシェル・ウィリアムズ。
  監督は今作でアジア人初のアカデミー監督賞受賞者となった『グリーン・ディスティニー』のアン・リー。雄大な南部の自然の中に溶かし込むことで、その愛から普遍性を立ち上らせる。
  そこには特殊なことは何もない。だからこの映画は、それを騒ぎ立てることなく静かに見守る。許されぬ愛の、静かに、しかし避けがたく悲劇へと向かう姿を。
 

 ゲイ映画は数あれど、アメリカのメインストリームにおいて、「オカマ」ではない男同士の恋愛を描いたのはこれが初めてではないか?
  「オカマ」化すれば、それは社会からのドロップアウトであり、そこでは一般道徳は適用されない。だからこれはOK。しかし、きちんと女性と結婚しており、子どもがいて、普通の労働に従事している人間が同性愛におちるところが、この作品の核になる。
  彼らは裏返ったような声で話すわけでもなく、なよなよとした立ち居振る舞いをするわけでもない。むしろ言動は粗野で乱暴なくらいで、「それ」とわかるような表面的なものは何もない。つまり、これはあなたや、あなたの隣人である男の物語でもあるわけだ。ヒース・レジャーの娘との関係をじっくり描くことで、それを強調している。
  愛が国境や、身分や、性の壁を越えるというだけでなく、それはわれわれにも起こりうるんだというところにまで踏み込んだことに、この作品の意味がある。



時間表は>こちら

『ウォーターズ』 
『シリアナ』
『THE有頂天ホテル 通常版』(一週延びました)

 

『THE有頂天ホテル 日本語字幕版』
『ナイトウォッチ PG-12』
『ファイアー・ウォール』



vol.6 ドリームズ・カム・トゥルー

 
 あきらめなければいつか夢はかなう。このどこかで聞いた夢のようなセリフを映画を見た人に信じこませてしまうのが5月27日公開の『GOAL! 』です。
 サッカーと共に育った少年サンティアゴは、貧しい環境から抜け出すため家族と不法入国したロスでイギリスから来ていた元スカウトに才能を見い出され、イギリスのプレミア・リーグの名門ニューカッスル・ユナイテッドへの入団にトライしてみないか? という夢には見ていたけれど、実現する夢とは思ってもいなかった話に自分を賭けてみようとする。

 しかし必死に働いて独立するという手近な夢しか信じることが出来なくなっていた父親との確執を切り離せないままにサンティアゴは単身イギリスに渡ることになるのです。

 ここから夢のようなサクセス・ストーリーが展開するご都合主義映画になる訳ではありません。 FIFA (国際サッカー連盟)の公認を受けているので、実在チーム、実在選手が物語の中に織りこまれていてフィクションなのにリアル・ストーリーのように様々な物語が展開します。サンティアゴと父親との確執はなくなるのか? サンティアゴの才能はプロの環境でほんとうに発揮できるのか? 才能だけでは結果が伴わないチームプレーの妙味とは? 花形選手になったあといかにして自分のハングリーさを保てるか?友だちに恋人にどう接することがほんとうに正しいことなのか? これらのエピソードが映画を面白くする要素として、正しい文法をもってつくられているので、いちいちツボが刺激されて気持ち良い!

 スポーツ映画としてではなく、最近は面白いんだけれど満足度が低い映画ばかりだどお嘆きの方にこそオススメします。『県庁の星』のスタッフの皆さんもこの映画をお手本にして反省しましょう! あの辛口のラストがもっと素晴らしくなるはずですよ!
  そしてこの『GOAL! 』何と 3 部作ストーリーの1 本目で、主人公はこれからさらなる試練を乗り越えてバージョンアップしてゆく、これはその壮大な夢のはじまりなのです。

 まさに「お楽しみはこれからだ」なのです!

  夢の種類は人それぞれ。そしてちっぽけな夢、でっかい夢と夢には大きさがあるみたいによく言いますが、それは第三者が他人の夢を評しての言葉であって、それぞれの夢が実現するまでの過程を考えれば人の夢の大きさを計ることなど誰にもできやせんのです。『ルディ〜涙のウイニング・ラン』は第三者にとってはちっぽけに見える夢が、本人にとってはとてつもなく大きな夢で、かつその実現のためには途方もないハードルが立ちふさがっていたというお話です。
  イリノイ州の田舎町に住む少年ルディの夢は、フットボールの名門ノートルダム大学のチームでプレーすること。体が小さくてフットボールには向かない、大学に入学する学力は足りない、家も貧しい。家族はそんなハンデキャップだらけの夢をルディが叶えるのは無理だと思ってまともに相手にはしなかった。でもルディはその実現を信じて行動を起こした。その彼の夢にやがてまわりが引き込まれてゆくのです。『GOAL!』と同じ要素はありますが、決定的に違うのはこれは実話だということ。ルディがあきらめずに実現したちっぽけだけど、でっかい夢をみなさんも見届けて下さい! 『ロード・オブ・ザ・リング』のサム役でおなじみショーン・アスティン唯一の主演映画。彼、大活躍です!
 『ルディ〜涙のウイニング・ラン』はシネマカウンシルの第3 回投票テーマの候補作に推挙したのですが、プリントが使えず実現しませんでした。が、いつかこれをスクリーンで上映したい! これが私のちっぽけな夢でもあるのです。

  また、映画館で会いましょう!

GOAL!
2005 年米=英合作
監督 ダニー・キャノン
出演 クノ・ベッカー
    スティーヴン・ディレイン
    アンナ・フリエル
    アレッサンドロ・ニヴォラ
配給 東芝エンタテインメント
5月27日(土)よりロードショー公式HP
ルディ〜涙のウイニング・ラン
DVD発売中
¥ 2,000 (税込)  [ 期間限定価格 ]
発売・販売元
(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


 第4回投票、ありがとうございました。見事選ばれましたのは『サイドウェイ』です。離婚を引きずるワインおたくの中年男の滑稽と悲哀を描いた、大人の喜劇。きどったワイン通が鼻につく映画にあらず。
 主演は、いつもは脇において素晴らしい輝きをみせるポール・ジアマッティ。最近では『シンデレラマン』で、確実に主演のラッセル・クロウより目を引いていました。ウィリアム・H・メイシー、フィリップ・シーモア・ホフマンと並ぶアメリカ三大「情けない中年系」役者、と言っても良いでしょう。知っておいて損はありません。
 上映の日程が決まりましたら、HPで発表します。もうしばらくお待ち下さい。

 さて、先週は『マルホランド・ドライブ』にお越しいただき、ありがとうございました。ここで書いたように「強迫神経症的演出」を楽しんでいただけましたでしょうか? ファミレスの裏、あの角の向こうに何かがいるんじゃないか、いるんじゃないかというシーンや、誰かが自分を責めているんじゃないか、と悩んで小さな老夫婦の幻影に追われるあたりに明確に現れてましたね。
  「劇場」の場面も強烈です。本当は演奏をしてないんじゃないか? してないんじゃないか? という疑念を爆発させた素晴らしい表現になっていました。ライブに行って誰もが一度は感じたことがある「口パク疑惑」を、あんな風に芸術的に昇華させられるのは、リンチだけでしょう。あの場面、まさに真骨頂です。

 次の投票は、どんなテーマにしようか考えるのは楽しい仕事です。何か素晴らしい企画を思いついた方は、どうぞメール下さい。上映できない作品のあまりの多さに泣きたくなりますが、出来る限りの努力はさせていただきます。

  アドレスはこちら >> seek@cinemacity.co.jp
 シネマカウンシルって何?という方は >>こちら

『恋の秋』 … DVD発売中 KKDS-41 ¥5,040(税込)   発売元:IMAGICA 販売元:紀伊國屋書店
『サイドウェイ』 … DVD発売中 税込¥1,780 20世紀フォックス ホームエンターテイメント
(C)2006 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『居酒屋兆治』 … DVD発売中 TDV15005D 4725円(税込) ■発売元:東宝 ■販売元:東宝
(C)1983 TOHO CO., LTD. All rights reserved. 
『モンドヴィーノ』 … 4月21日(金)DVD発売 TBD1123 ¥3,990(税込)
発売元(株)クロックワークス 販売元(株)東北新社
(C)1987 ITC,All Rights Reserved. Licensed by Granada International Media Itd.


 『ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス』と『マンダレイ』を観てきた。どちらも個人的に好きな監督の作品であり、そのクオリティの高さに圧倒されたのではあるが、ひとつの疑念をぬぐい去れないでいる。
  前者は暴力の連鎖と功罪を問い、後者は「支配と従属」の精神構造を心理学的に紐解いていくことで理想主義の功罪を問う。
 そして両者ともアプローチは異なっても、アメリカのポリティカルな問題とリンクさせている。ここ数年の政治的状況が、映画製作者に多大な影響を与えているのは当然と言えば当然で、そこを避けて通ることはむしろ逃避ですらあるのかも知れないが、誤爆を覚悟で言わせてもらえば、個人的には「政治的問題」というのは複雑ではあっても、思想的深度はあまりないと考えている。
 例えばデイヴィッド・クローネンバーグなら『クラッシュ』で、ラース・フォン・トリアーなら『奇跡の海』で、「性と死」の深淵にあれほどまでに肉薄したにも関わらず、あえて辛辣に言わせてもらえば、今回の作品は(問題の相対化ゆえ)「優等生的」である。当然政治的問題にリンクさせようと考えれば(そして「単純さ」の暴力を回避しようとすれば)、ここに帰結するよりない。少なくともこの二作で扱われている「政治」というものは、突き詰めれば「二者以上の利益追求の衝突の解決を図るもの」にすぎないからだ。つまり問題の帰結先としてそれほどの選択肢があるわけではない。
 政治的問題に迫りながら、かつそれを超越した地点に到達しようとするならば、エルンスト・ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』のようにナイフのような笑いで切り刻むか、コッポラの『地獄の黙示録』のようにトランスに陥って狂ってみせるか、そうでなければスピルバーグの『宇宙戦争』のように、生命活動の一端と悟りきって問題を宇宙の彼方にすっ飛ばしてみせるかしかないだろう。つまり問題に対し真摯に真っ向から対峙してはいけないのだ。

 …ただ最終的には趣味の問題だろう。このような「地点」など現実的意味(あるいは価値)を持たないからダメだとするか、それゆえに素晴らしいとするか。
 しかし、一つ言いたいのは、クローネンバーグもトリアーも「地点」にたどり着ける才能を持っているではないか。そういう才能は世界中にもごくごくわずかだ。ならば、そこを目指すべきではないのか? 単純な意味や価値に絡み取られているのではないか?

 誤解のないようにつけ加えておくが、創作を通じて社会にコミットすることは価値有ることだと思っている。マイケル・ムーアの新作(今度は医療業界を攻めるらしい)、楽しみ。

表紙の顔 …

『ウォレスとグルミット』のウォレスとその吹替版で声を演じる萩本欽一。第一作『チーズ・ホリデー』から欽ちゃんの一人語りで展開されてきたわけだが(『危機一髪』では2人)、何というかこう、欽ちゃん以外の誰でもないわけで。新作 『野菜畑で大ピンチ!』は絶賛上映中。劇場へ欽ちゃんに会いに行こう!
*グルミットはマロンフィールド画伯作。


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