 『沈まぬ太陽』(←力作!)の試写を朝日ホールで見せていただいたあと、ネクスト・ボスに銀座にある「モーリバー」に連れて行ってもらった。
僕は飲むといったもっぱら「蕎麦屋で日本酒」なので、バーはほとんど行ったことなく知識も全然ないのだが、ネクスト・ボスは無類の酒好きで、やたらと飲み歩いているらしく、バー業界の人脈なんかにも妙に詳しい。映画には全然詳しくないくせに(笑)。
そんな彼が「日本で最高のバーのひとつ」というのが「モーリバー」。ビルの10Fにあるのだが、わかりやすい看板もないので一見さんにはちょっとハードルが高いかも知れない。とはいえ店内に入ると変に気取っているわけでもなく、僕のような若輩者でもリラックスできる親しみやすい空間であった。
カウンターに腰掛けると、さっと湯飲み茶碗が供されて、やけに少量の温かいお茶が入っている。なぜこの量? っていうか、バーでお茶? まあいいかと口に含んで驚いた。塩辛いのである。え、塩昆布茶ッ!? いや違う、コンソメスープだ。
さらに小皿にて出てきたのは、かっぱえびせんにおしゃぶり昆布に柿の種という、なんともアットホームなおつまみ。「銀座の隠れ家的超一流のバー」というイメージを180度裏切ってくるいきなりの展開に、一気にこの店に惚れてしまった。こういうのが本物の店というものか、と妙に納得した。
さてまずは泡モノからいただこうと、僕はジンバックをお願いする。なにしろジンジャー好きなのだ。ネクスト・ボスはいきなりマティーニだ。モーリバーと言えばマティーニらしい。
しばらくして出てきたグラスは、デカっ!! 以前から聞いてはいたのだが、このモーリバー、とにかく一杯の酒量がふつうの倍以上ある。
さっそく、と一口のんで「あっ」と思った。酒の冷たさ、甘み、透明感がきりっと伝わってくる。そう、コンソメスープの効果である。口の中が、酒と真逆になっていたのだ。なるほどなあ。
やっと飲み終わったら、夕飯も食べずに飲み始めたこともあって、すでにほろ酔い。ふとしたきっかけで、隣席の四十代前半くらいの男性と会話が始まった。
「僕の座右の銘は一期一会なんです」
いや、まったくおっしゃるとおり、出会いこそ人生を豊かにする一番のスパイスです、なんてなんの意味もないような受け答えをしていたが、驚くことにその方は、なんとインドネシアのなんとかいう島の地図をお作りになったのだという。
おお、インドネシアの伊能忠敬ですか。面白いこと言うね、君。測量に次ぐ測量で、実に地味な作業なんだけど…でも地図には僕の名前が記されているんですよ。
長々と書くわけにもいかないが、実に面白い話を聞かせていただいた。
この方はかなりの常連らしく、数名のバーテンダーに、さりげなくマティーニをご馳走していたのもカッコ良かった。
僕は人見知りなので、人との出会いというのは苦手なほうだが、それでもこんな素晴らしいこともある。
なんか映画館をこういう場所に出来ないものかなあ。難しいとは思うけど、それは素敵なような気がする。劇場の一期一会。
盛り上がりすぎて、その後、ギムレット、マティーニ、モーマティーニと四杯も飲んで…つまり普通の量で考えたら8杯以上も飲んで、ベロベロになって帰途についた。
よってもちろん今日は二日酔いである。まだちょっと頭痛い。良いことは、痛みを伴うものだ。
今週の顔 |
白土三平。日本を代表する漫画家。『カムイ外伝』いよいよスタート。
また代表作のひとつ「忍者武芸帳 影丸伝」の復刊もスタート。これは見逃せない。
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