グラン・トリノ


(C) 2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

監督■クリント・イーストウッド(『チェンジリング』)
脚本■ニック・シェンク
出演■クリント・イーストウッド(『ミリオンダラー・ベイビー』)
■■■ビー・バン
■■■アーニー・ハー
配給 ■ワーナー・ブラザース映画




 古き良き道徳や理想をなくした、社会や自分の子どもたちに愛想をつかしている頑固じいさんウォルトは、近所を占領しつつあるアジア人たちを忌み嫌っている。
  ある日、隣に住むアジア人少年が不良グループにおどされて、ウォルトが何よりも大切にしているアメリカ車の傑作フォード・グラン・トリノ・スポーツを盗みに入る。ウォルトはショットガンで少年を追い払うが、ますますアジア人がキライになる。
  だが同様に、盗みに失敗した少年をイジメにきた不良グループを「俺の芝生に入ったから」と銃で追い払ったのをきっかけに、近所中のアジア人から感謝され、アジア人=モン族の隣人たちと少しずつつきあうようになる。そして盗みに入った本当はシャイでマジメな少年を気に入り「アメリカの男」として鍛え上げようとし始める。

 イーストウッドほどの大巨匠の作品ともなれば、どれほどの深い人間ドラマをお観せ下さるかと背筋を伸ばして構えてしまうようだが、驚くべきことに、今作の70%は「頑固じいさんのヘンクツ日記」とでも名付けたい、大笑いコメディなのだ!
 アメリカのテレビなら「ピー音」で消されまくるであろう差別用語をばんばん毒づき、アジア人はもちろん、黒人もヒスパニックもイタリア人も、もう全人種を敵に回すありさま(笑)。この悪口が堂に入っていて、可笑しいったらないのだ。
 例えばこうだ。隣家のモン族のかわいらしい女子高生がせっかくいっしょにバーベキューしようと誘いにきたのに対し、

 「俺の犬だけは食わせないぞ」(韓国人じゃないってのに・笑)
 でも女の子のほうもたいしたもので
 「犬なんか食べないわ。私たちが食べるのは猫だけよ」
 これには劇場中が爆笑。

 78歳にして、成熟のコメディ演技を見せ、もちろん往年のマカロニ・ウェスタンやハリー・キャラハン警部のファンも大喜びさせるアウトロー芝居もばっちり決めるイーストウッドに、メロメロになること間違いなし。
 もちろん笑いに終わるだけでなく、やわな「ちょっとイイ話」でもなく、俳優業の最後を飾るにふさわしい、美しく荘厳な余韻を残す傑作である。
 今年度キネ旬ベスト10に確実に食い込むと断言できる。

 
 



 老人は若者に絶望するものと昔から決まっているのかも知れないが、しかし、あきらめたり怯えたりして暮らすのではなく、あくまでおのれのスタイルを貫き通し、孫にだろうが不良にだろうが果敢にケンカを売っていくイーストウッドの姿に快哉を叫ぶのは、年配層だけに限らないのではないだろうか?

 昨今、過剰なほど「正しい人」であることを求められる社会にあって、イーストウッド演じるウォルトは明らかに人種差別的な「不適切」発言をし、あたりかまわずペッとツバを吐き、揉めごととなると銃を持ち出してくる「危険人物」だ。小うるさいポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)なんかクソくらえと言わんばかり。もしウォルトがブログを始めたら、その日のうちに大炎上間違いなしだろう。

 だがそれが何事か。機械工として勤め上げてきた男には、人気商売のように誰かの「ご機嫌」を伺う必要などまったくない。顔の見えないつきあいなんかない。イーストウッドはそんな社会に迎合せず、その外にあって己の信じるところの「正義」を貫く男を、人生を通じて演じてきた。
 この俳優人生の集大成といわんばかりのウォルトという頑固クソじじいを、美化するでもなく、むしろ自嘲気味に描く余裕がクールだ。観客は笑いながら成熟の何たるかを知ることになる。
 まさに愛車グラン・トリノが、時を経てまた現代の若者をも魅了するのに似ているではないか。
 巨大だがシャープなフォルムを持つ深いオリーヴグリーンのボディが艶やかに風景を映し込むとき、誰の目にもこれが何を象徴するのかが一目でわかる。これこそ「映画」だ。

 やがて政治的に不適切と思われた作品が、『硫黄島2部作』には黒人兵が出てこない、との批判をヒネって返したような(あくまでもイーストウッド的な)「正しさ」を叩きつけてくる。これにはニヤリとしてしまう。

 ラストも時代を反映した9.11以降のテーマで締めつつ、かつ、父と子のドラマという最もアメリカ映画が得意とする伝統の主題を語って、これほど完璧な俳優としての幕切れを持つ人も他にはいまいと、ただただ感服するしかない。ラストに流れる歌も意味が深い。

 
 
  〜4/30(木)
 

ザ・バンク
堕ちた巨像
PG-12


ニセ札


ピンクパンサー2




 
  〜5/8(金)
 

プリキュア
オールスターズ
6日(水)まで


相棒
鑑識・米沢守の
事件簿


ひぐらしのく頃に


ドロップ


ヤッターマン
 
 


マックス・ペイン
PG-12


レッドクリフpart2
吹替版
(字幕は継続)


ある公爵夫人の
生涯


 
   5/1(土)〜
 


GOEMON


ビバリーヒルズ
チワワ(吹替)


新宿インシデント
R-15


劇場版
超仮面ライダー電王
&ディケイド
 
   5/9(土)〜
 

余命1ヶ月の花嫁


バビロンA.D.


 
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【速報】ケイト・ウィンスレットにアカデミー主演女優賞をもたらした『愛を読むひと』
そして惜しくも受賞は逃したものの、主演男優賞の大本命だったミッキー・ローク主演『レスラー』も上映決定!!
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↑公式HPは終了しています。


vol.4 The breast radio

FMたちかわで放送されているシネマシティのコーナーが
気が付けば放送開始から3ヶ月を迎えていた。

さすがに3ヶ月も出演していると、何となく慣れが出てくるのか
トークの間合いの良さや機転の利いたアドリブなど
気分的には「立川の大沢悠里だな。」という自覚の下
若干楽しんで放送している僕がいた。
しかし、最近になって録音されていた番組を聞き返してみると
そこにいたのは、会話に落ち着きが無く、
本人は若山弦蔵を気取ってショーン・コネリーばりの
美声を披露しているつもりが、実際には変に上擦った声を出している僕がいた。
さらに、僕の心を締め付けるのが、
ただでさえ常日頃から、自分の声を客観的に聞くという事は
恥ずかしく思ってしまうのだけれど、
それが、立川にお住まいの方ならいつでも聞ける環境に放送されているという現実が
心の万力を「これでもかこれでもか」と締め上げるわけである。これは恥ずかしい。
とは言え、恥ずかしがっていては毎週の放送を
今後継続していくのは、かなり困難な道のりなのも事実。
どうすれば己に打ち勝つことができるのか?

「この『おっぱいバレー』という作品ですが…」
「おっぱいとバレー。これはまさに思春期の象徴とも言える存在でして…」
「おっぱいのために部活動に打ち込む姿勢。動機は不純ですが。良いじゃないですか…」
先々週の放送での一コマ。

とりあえず、生放送の限界に挑戦するところから始めてみた。

言わずと知れた映画『おっぱいバレー』の作品紹介。
この作品を取り上げた理由としては、
無論、僕が試写室で鑑賞して大変感激した映画だったというのが一番なのだけれど。
(SEEK読者の方々にはお馴染み。バレーボールと言えばハラグチですから…)
それとは別に、どうやら、この作品がインターネットの世界で、
「チケットを買う時にタイトルを言うのが恥ずかしい」と話題になっていたから。

これはイカン。

凄くセクシャルな言葉ではないのだけれども、
確かにタイトルに「おっぱい」が入るのは恥ずかしい。
「おっぱい」なんてワードはいいとこ中学生位までしか胸を張って公の場で言えないし、
ましてや大人になってからは、自身に子供が出来た時に辛うじて使用する位ではないだろうか。
それぐらい世の中では「おっぱい」という言葉を発するのに勇気が必要なわけで。
ならば、お客さんに先行して僕が公の場で「おっぱい」という言葉の敷居を下げようという
心意気で放送に臨んだのである。まさにおっぱいのパイオニア。(何か違うけれど)
さらには、このギリギリのワードを生放送で発することで
己の「ハズカシイハズカシイ」精神を一から鍛え上げようという魂胆。

結果としては、放送内で映画の良いところが伝えられたと思う。
冒頭から「おっぱい」負けしかねない放送の流れではあったが、
絶妙な僕のトークで、
「思春期の性への好奇心からくる可笑しさ・友情の大切さ・
1つの事を成し遂げる事の意義が詰まった感動的な青春映画です。」と
晴れやかに紹介できた。さらには30秒に1回「おっぱい」と言う事も出来た。
感無量。僕的には胸がおっぱいだ。

という恥ずかしい文章をこのコラムで書くことで、
さらに「おっぱいバレー」のチケットが買いやすくなればと思い
筆を執りました。
『おっぱいバレー』絶賛公開中です。

ご報告
シネマシティコーナーの放送時間が一部延長される事になりました。
放送時間は以下の通り。
ご愛聴よろしくお願いします。

FMたちかわ 周波数 FM 84.4MHz
放送エリア  立川市全域及び隣接市の一部
『アクロス・ザ・モーニング』
金曜8:00〜10:55
(シネマシティコーナーは9:50〜10:00頃と10:20〜10:30頃放送)

(C) 2009「おっぱいバレー」製作委員会


 今年のカンヌ映画祭のコンペ部門のラインナップが23日、発表された。

 日本からは期待されていた『歩いても歩いても』の是枝裕和監督が業田良家(「自虐の詩」)のマンガを原作にした『空気人形』が選出されず、残念なことに一本も入っていない(『空気人形』は「ある視点」部門に選出された)。
 撮影監督が大ファンのリー・ピンビンと聞いてあまりの喜びに悶絶していたのになあ。ホオ・シャオシェン監督の絵筆。スクリーンから水がこぼれ落ちてくるのではないかと思うほど潤んだ映像が心を奪ったトラン・アン・ユン監督の『夏至』を撮った人。

 だが俳優としては『死ぬまでにしたい10のこと』のイザベル・コイシェ監督の『Map of the sounds of Tokyo』に菊地凛子が主演。コイシェ監督は淡々と人間の心の奥底をえぐってくる優れた作り手ではあるが、この作品、あらすじを聞くとさすがに心配になる。
  なにしろ菊池凛子演じる主人公は、魚市場で働く女殺し屋という超絶設定。どんな屈強な男でも素早い包丁さばきであっと言う間に3枚におろすという恐ろしい女だ(←勝手な想像)。
 この女殺し屋が、大物ビジネスマンの娘を自殺に追いやったスペイン人を追うのだが、さらにその女殺し屋に魅せられた田中泯演じる音響技師が、東京の「音」を収集しながら迫ってくる、というものらしい。さっぱり意味がわからない。『イル・ポスティーノ』の最後らへんみたいなものか?
 日本が舞台で日本人出演というだけでなく、要注目作である。監督の「私の大好きなワサビ、そして官能的ともいえる東京のバイブレーションを描きたい」というコメントも最高だ。


 ほかに気になった作品ではやはり大ファンであるペドロ・アルモドバル監督(『ボルベール<帰郷>』)、そして大好きなペネロペ・クルスちゃん主演の『Broken Embraces(訳:中断した抱擁)』 (スペイン公式HP)もう何なのよ、このセンスの良さッたら。思わずオカマ言葉になっちゃうわ。
  ぜひ公式HPの「imagenes」というところからトレーラーをご覧いただきたい。始まって30秒くらいのところで映るカーテンの柄を見せていただけただけで1800円ペイだ。もう何ヶ月かしたらこんな美しいものをスクリーンで観られると思っただけで幸せになる。今度こそシネマシティで上映させてもらえないものかなあ。

 この調子で書いていったらとんでもなく長文になってしまうのであとは一言ずつで。

 やはり剛山が大好きな監督のひとり、ラース・フォン・トリアー監督の新作は『antichrist(訳:反キリスト)』(アメリカ公式HP) というタイトルからヤバい、心理スリラー。主演がウィレム・デフォーというからさらにヤバい。共演にシャルロット・ゲンズブール。子どもの死に傷つき、森にこもる夫婦の話らしい。『ドッグヴィル』『マンダレイ』のシリーズに続き、いったいどんな狂ったヴィジュアルを見せてくれるかと期待が高まるが、予告を観る限り、今回は実験的要素は少なそうだ。

 『麦の穂をゆらす風』のイギリスの巨匠ケン・ローチ監督の『looking for eric』(イギリス公式HP) も観たくてたまらない。ローチに外れなし。今回はわりと楽しそうな作品だ。

 かつては『去年マリエンバードで』で難解映画の金字塔を建て、近頃はうって変わって『恋するシャンソン』や『巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)』で可愛らしいミュージカルを撮っているフランスの巨匠アラン・レネの『Les herbes folles(訳:おかしなハーブ)』はタイトルからして小粋なラブコメっぽい。観たいなあ。

 濃いめなのは『ファニー・ゲーム』や『ピアニスト』『隠された記憶』で毎度毎度観るものを叩きのめすミヒャエル・ハネケ監督の新作『The White Ribbon』か。モノクロ映画で144分もあるらしい。濃い。ハネケ144分は濃い。だがこれも見逃すわけにいくまい。

 『真夜中のピアニスト』のジャック・オーディアール監督の作品も入っている。『Un Prophete(訳:預言者)』。これも2時間半を越える大作。

 『エグザイル/絆』でクールな銃撃戦を見せてくれた香港の鬼才ジョニー・トーがフランス資本で撮った『Vengeance(訳:復讐)』はきっとまた男気あふれるものになっているだろう。

 ウッドストック・フェスティバルの立役者となったインテリア・デザイナーの青年を描くのは『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督。タイトルは『Taking Woodstock』(アメリカ公式HP)これはかなり痛快そうだ。

 話題作と言えば、クエンティン・タランティーノ監督、ブラッド・ピット主演の1976年のイタリア映画『地獄のバスターズ』のリメイク『Inglourious Basterds』(アメリカ公式HP)。予告編を見る限り傑作のニオイがぷんぷんする。

 このほかにも『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督のヴァンパイア映画とか、『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオン監督の作品とか、さすがカンヌ映画祭という面子。
 このうち何本シネマシティで上映させてもらえるだろう? ハネケは100%ムリだな(笑)。

 このほか詳しくはカンヌ映画祭のオフィシャルHPで。

今週の顔

世界の広末涼子。『おくりびと』で大変にエロティックなシーンをお見せいただき、ありがとうございました。いよいよ5月1日からスタートするは、西洋も東洋も時代も何もごちゃまぜなスーパー時代劇アクション『GOEMON』
ヒロスエはあの茶々を、キュートな髪型で熱演している。

ご意見、感想お待ちしております … seek@cinemacity.co.jp  

◇メルマガ名  シネマシティメールマガジン『SEEK』
◇発行人サイト シネマシティ http://cinemacity.co.jp/
◇責任者名   シネマシティ株式会社 SEEK編集部 遠山
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