ウォーク・ザ・ライン 君へ続く道

監督■ ジェームス・マンゴールド
出演■ ホアキン・フェニックス(『炎のメモリアル』)
     リース・ウィザースプーン(『メラニーは行く!』)
     公式HP こちら
(C) 2005 TWENTIETH CENTURY FOX

 カントリー界の異端児ジョニー・キャッシュの生涯を描く伝記。
  夭逝した美貌の兄、リヴァー・フェニックスに比べ、ホアキンはなんだかもっさりした印象で、兄の七光り俳優かと思っていたが、『グラディエーター』あたりから頭角を表し始め、今作ではついにゴールデン・グローブ主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。吹き替えなしで自ら歌い、ジョニー・キャッシュになりきった。
  一方、しゃくれたアゴで女優というものの美的基準を拡張したリース・ウィザースプーンも、自ら歌い、相方ジューンを体現する。同じくゴールデン・グローブ主演女優賞を受賞。アカデミー賞にもノミネートされている。
  監督のジェームズ・マンゴールドは 『コップランド』で渋い演出を見せ、新しい才能の予感を感じさせた。その後『17歳のカルテ』『”アイデンティティー”』『ニューヨークの恋人』など、ジャンルばらばら、小さい映画から大きい映画までこなす職人系。『イン・ハー・シューズ』から『L.A.コンフィデンシャル』までほぼ完璧にこなすカーティス・ハンソンに続いて欲しい。

 

 ミュージシャンの伝記モノというのは、これは習字にお手本があるように、ストーリーの型はだいたい決まっている。
 幼少期のトラウマ → 才能の萌芽 → 成功と、その代償としての私生活の崩壊 → 地獄の苦しみ → 奇跡の復活。ないしは破滅。
 この決まった物語をどう語るかが作品の出来不出来ということになるのだが、しかし、それより何より作品に圧倒的に影響してしまうのが「その音楽に対する個人の好み」じゃないだろうか。他ジャンルの伝記ならこれほど好悪に依存することもない。映画と音楽という分かち難い関係が、そうさせているのだ。
 ソウル・ミュージック好きなら『Ray/レイ』で「Hit the road Jack」が掛かった瞬間、全身の血が騒ぎ出すだろうし、モダン・ジャズファンなら『バード』や『ラウンド・ミッドナイト』には黙っていられない。好きなモノは好きなのだから、それでいいということになってしまう。
  なので、カントリー&ウェスタン好き、オールドなロックン・ロール好きにはオススメ。カントリーのファンで無くても、伝説のフォルサム刑務所ライヴのシーンは「よしッ!」って感じで熱くなる。



時間表は>こちら

『燃ゆるとき』 『ピーナッツ』
『美しき野獣 R-15』 『オリバー・ツイスト』
『クラッシュ PG-12』 『ジャーヘッド R-15』
『単騎、千里を走る。』

 

『ナルニア国物語/第一章ライオンと魔女』
『ドラえもん のび太と恐竜』
『機動戦士Zガンダム3』 『シリアナ』
『ワンピース カラクリ城のメカ巨兵』



vol.5 『サマーストーリー』

 
  「悔恨の男」と言えば、何と言っても高倉健さんです。もう一言自分の口から話をしていれば、人の誤解を招くこともなく、愛する人が去ってゆくこともないはずなのに、健さんはそんな時にも「不器用ですから…」と言って下くちびるを噛みしめてしまうのです。健さんを知らない方はどうしてその人はそういう行動を取ってしまうの? といぶかる方もいらっしゃると思いますが、それが「健さん」という人だから仕方がないのです。人に対してもうひとつ働きかけが足りないという不器用さでは私椿原もひけをとらないつもりなのですが、これがかっこいいで通るのは「健さん」だけです。なぜなんですかね? 同じ不器用なら私も健さんに引けは取らないはずなんですけど。

 最新作『単騎、千里を走る。』でも健さんはアクションが足りないばかりに、息子と断絶している父親を演じています。しかし健さんもさすがにお年を召したのか、遅ればせながら息子のために中国へひとり渡るという大きなアクションを起こします。でも健さん今回はけっこうしゃべるんですよ。やはり不器用ですから自分の気持ちをモノローグという形としてですけど。

 その中国で図らずしも父親と引き離されている少年と言葉は通じないのに心を通わせることになるのです。ああ、もっと早く自分の息子ともこうしていれば…。とは口に出しませんが、健さんの顔に書いてあります。やはり健さんあくまでも「悔恨の男」なのです。いよいよ3月3日まで。

  ふつう「悔恨」と言えば「若気の至り」でやったことが原因のほとんどだと思うのですが、これがこと恋愛に関してとなると胸がしめつけられる『サマーストーリー』のような物語になります。主人公の青年アシュトンが卒業旅行で立ち寄った土地でめぐり合ったのは、農家の娘ミーガン。都会のけがれがなく清純でエネルギーにあふれているミーガンと愛し合うようになったアシュトンはお互いの身分が違うことをどうしても切り離せず、当然のように駆け落ちという話になるのですが、これからがまさに「若気の至り」。アシュトンがミーガンを何よりもまず第一にという行動を取らなかったばかりに、この若さゆえの激しい恋は悲劇的な結末を招いてしまうのです。
 
  その美しいままで悲劇的な結末は、映画をご覧になっていない方のために伏せますが、この映画の原作になったジョン・ゴールズワージーの短編小説「林檎の樹」には「あの頃、僕は 20 歳だった。青春が美しいなんて、僕は誰にも言わせない…」という記述がありますが、映画を見たあとにこの表現に触れると若かりし頃の自分の恥ずかしい振る舞いの数々、そして後悔しても二度と取り戻すことができないことがあまりにも多すぎることを思い出してしまうのです。若い頃はバカをやるものです。でも自分があの時どうしてあんなバカをやってしまったのだろう。と考えることができるのはもう自分が若くなくなってからなのです。ということは私椿原はもう若くない !?  こんなこと書くんじゃありませんでした。

 また、映画館で会いましょう!

サマーストーリー

1987 年イギリス映画
監督 ピアス・ハガード
出演 ジェイムズ・ウィルビィ
     イモジェン・スタッブス
音楽 ジョルジュ・ドルリュー
DVD発売中
TBD1120
¥3,990 (税込)
発売・販売元(株)東北新社

(C)1987 ITC,All Rights Reserved. Licensed by Granada International Media Itd.

 

 第3回投票、ありがとうございました! 選ばれたのは最初から圧倒的な強さをみせた『遠い空の向こうに』です。公開時は上映劇場も限られていましたので、スクリーンでご覧になられている方は少ないのではないでしょうか? 口コミで素晴らしさが広がり、多くの人の自信を持って人にオススメできる映画の1本になっています。
  芸術的とか、創造的とかいうのとは真逆の価値観でまったくすごく良い作品です。きっちりとした青春についてのドラマがあり、その上でロケット打ち上げ実験のディテールにこだわり抜いています。そこに命が宿っている 。
  監督のジョー・ジョンストンは『ロケッティア』や『ジュラシックパーク3』の監督。というとB級っぽいですが、いやいや、バカにしたものではありません。ジブリ映画に匹敵するほどの「飛行シーン」へのこだわりは見事の一言。胸がすくような爽快感が味わえます。
  上映期間が決まり次第、またお知らせします。お楽しみに!

  ちなみに第2回選出作品『マルホランド・ドライブ』は3月18日からスタート。来週はこの『マルホランド・ドライブ』についてその魅力を語ります。個人的に好きで好きで仕方ない作品なので熱が違います。

  シネマカウンシルって何?という方は >>こちら
  『遠い空の向こうに』 … DVD発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン レンタル中


 最近、シネマヴェーラ渋谷に通っている。以前にもここで書いた北野武レトロスペクティヴに続き、今は『次郎長三国志』シリーズ一挙公開中。映画評論家の重鎮、蓮實重彦大先生も絶賛、山田宏一先生にいたってはご自身の「時代劇ベスト10」の全部が『次郎長三国志』シリーズと語ってらっしゃるほど。
 そこまでか、と観に行ってびっくり。これはそこまで言われてるも納得の面白さ。やくざモノって言っても想像するものとは全然違って、『スタンド・バイ・ミー』を思わせる突き抜けた楽しさがある悪ガキ映画とでも言いたいくらい。
 子分たちのキャラクターがいちいち良くできていて、とりわけ森の石松の森繁久弥には仰天した。過去の仕事はよく知らなくて、芸能人の葬式コメンテーターくらいに思っていたのは大間違い! 「芸」ってこういうこと、みたいな異様な圧縮エネルギー! 笑って泣けて、エンターテイメントの王道一直線だ! 
 ぜひ、皆さん、明日からでも観に行って下さい。

  また、シネマヴェーラで会いましょう!

表紙の顔… 市川崑。クーベルタン男爵、モリコーネと続いたオリンピックシリーズの最後を飾るは、斬新な手法で論争を巻き起こした記録映画『東京オリンピック』の監督。SEEK読者の方なら説明無用かも知れませんが、明朝体をグラフィカルに並べるのは『エヴァンゲリオン』がパクったのです。元祖は市川崑監督です。  

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