ジャーヘッド

監督■ サム・メンデス
出演■ ジェイク・ギレンホール(『遠い空の向こうに』)
     ジェイミー・フォックス(『コラテラル』)
       公式HP http://www.jarhead.jp/top2.html
(c)Universal Studios All rights reserved

  「ジャー」は炊飯ジャーのジャー。
  瓶頭、つまりツルツルの丸刈り頭のことで、海兵隊員の蔑称だそうだ。これには「空っぽ頭」の意味もあるという。
  15年前、われわれが初めて目にした「TVゲーム化した戦争」=湾岸戦争に参加した一兵士の手記の映画化。
  主演は『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』そして今年アカデミー賞に最も近い『ブロークバック・マウンテン』と優れた作品続きのジェイク・ギレンホール。軍隊モノの命とも言える鬼軍曹役には『Ray/レイ』でアカデミー賞に輝いたジェイミー・フォックス。そして監督には舞台の世界から進出し、いきなり『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞をかっさらったサム・メンデス。これだけカードがそろったら、つまらなくなる方が難しいというものだ。
  ヒロイズムとストーリーに満ちた第二次世界大戦映画から、ベトナム戦争映画になると目的と終着点を喪失して狂気に墜ちていくようになり、ついにこの90年代の戦争映画では、戦う相手が消失してしまっている。主人公たちは「誰一人殺さない」。一発も銃を撃たない。
  これは、今までのどの作品とも違う、新世紀の戦争映画だ。

 

 「コレ」があると、映画が俄然面白くなる、というものがある。例えば「決闘」。銃や剣をもって対峙してもいいし、法廷を舞台にしてもいい。とにかく正面きって向かい合い、火花を散らすシーンがある映画は面白くなる。他には「列車」というものもある。何故か列車が疾走し始めると映画は勢いを増してくる。『天国と地獄』『スピード』『ゴースト ニューヨークの幻』、ほらね。
  そして「修行・特訓」。どんなダメ映画でも、このシーンだけは胸が騒ぐほどだ。誰だってジャッキー・チェンでも『ロッキー』でも頭から焼き付いて離れないのは特訓シーンだろう。
  『ジャーヘッド』はそのへんのツボをきちんと押さえている。というか、マトモな戦闘シーンを入れないという策略を製作者が取った時点で、いわばほぼ全編「特訓」とも言えるわけで、これが面白くならないわけがない。
  そしてこの策略は、戦争映画が避けがたいはずの「生臭さ」もほとんど奪ってしまう。ここで代わりに立ち上がってくるのは「青春の普遍性」なのだ。『8mile』や『スタンド・バイ・ミー』の、あの味わいだ。
  これは不敵な映画である。図らずしもそうなったものではないことは、兵士の日常の「ある行為」に繰り返し言及することで、そこに作品全体を凝縮してみせたところからも明らかだ。



時間表はこちら
http://cinemacity.co.jp/webReservation/calendar.do

『サウンド・オブ・ミュージック』
『レジェンド・オブ・ゾロ』

 

『県庁の星』
『ダイヤモンド・イン・パラダイス』



vol.5 『ターミナル』 流さなければならなかったメロディ


  (ネタバレあり)

 あまりスピルバーグのことばかり書くのもなんだけど、『ミュンヘン』はまぎれもなく傑作であり、それに触発されて『ターミナル』についても書いてみたくなった。とりわけここ何年かのスピルバーグ作品は「読み込む」に足るもので、つまらないといっている人は「読めて」ないことが多い。いっぱしの評論家でも、例えば『A.I.』のような奇跡に近い傑作も読み間違えて「ピノキオ」としてとらえてしまう。
  「他人の心の中を、直接知ることはできない」
 という初歩的な哲学の命題を当てはめれば、夕立があがるようにさあっとあの映画が「読めて」くるんだけどなあ。 

 …さて、話を戻そう。『ターミナル』はロマンティック・コメディとして、それだけでもなかなかの出来ではあるんだけど、そこだけを見ても全体は見えてこない。むしろロマ・コメであることは全体の戦略のコマの一つである、とも言えなくもない。

 『トゥルーマン・ショー』の脚本、『ロード・オブ・ウォー』の監督であるアンドリュー・ニコルなんて曲者が原案で参加しているところからも、単純な映画なわけはない(設定がすでにかなりひねっているけれども)。

 まず、舞台となる空港だが、入っているショップがこれ見よがしに映される。STARBUCKS COFFEEDEAN & DELUCABORDERSHUGO BOSSBurger King、そして吉野家まで…。どれも世界的に進出している大企業ばかり。That's資本主義。アメリカへようこそ、というわけ。
 もちろん世界中の人間が集まってくる場所、という意味も込められている。とにかくここはミニチュア化されたアメリカそのもの、という設定だ。

 そこに登場するは、東欧の小国から来たアナクロニズムな男。オートメーションで画一的な「アメリカ」と真逆の男。彼はなんでも自分の手で作れてしまう。ブランドに頼らない。
 ただ、ここで一点注意しておかなければいけないのは『ファイト・クラブ』との違い。あの映画では大企業をバンバン破壊し(最終的には、それどころじゃないけれども)、清潔で気取った去勢社会にFuck you!を叫んでいたけれど(そういえばあれもひねったロマ・コメだったなあ)、『ターミナル』はそういうものを単純に攻撃しているわけではない。そこは間違えてはいけない。

 で、この主人公は掃除屋さんたちと仲良くなっていくのだが、型どおりそういう仕事に従事しているのはインド人に、メキシコ人に、黒人。こういうマイノリティで貧しい人々から徐々に、化学反応を起こしていき、その後冷たく見えたショップの店員たちが変わりはじめ、最後対立する価値観の大本とぶつかる、というのは教科書的展開。きっちり決まっている。

 さあ、そしてここからが、ひとひねり利いているところ。そうあの「ジャズ缶」だ。もしこの映画を単なるロマ・コメと見るならば、彼女とのビターな別離があって、祖国に戻れるとなってからのエピソードは不要になってしまう。「ジャズ缶」もいらない。
 では「ジャス缶」とは何か? が、このコラムの主題である。…と大げさに言ってはみたものの、特別な秘密があるわけではない。見た目そのまま、あれは「ジャズエイジ」の象徴ということだ。つまり、アメリカの黄金時代、1920年代の復古。これが『ターミナル』のメッセージなのだ。トム・ハンクスは、アメリカの黄金時代を探しに来ていたというわけ。

 このファンタジックな物語にあって、監督がこだわったのは「現在のアメリカ」と「黄金時代のアメリカ」をきっちり「現実のもの」として描くこと。単なるおとぎ話で終わらせず、現実と結びつけること。
 だからベニー・ゴルソン本人を出したのだ。彼は今も演奏を続ける本物のサックス吹き。確かにあの古い写真の時代は、今や失われたものだ。だが「死に去ってしまった」わけではない。アレンジは変わったかもしれないが、今もそのメロディは流れ続けている。

 それをはっきりと聴かせることでしか、伝えられないことがある。   

 第1回シネマカウンシル選出作品『サウンド・オブ・ミュージック』、おかげさまで土日は満席でした!
 ありがとうございます! そしてご覧頂けなかった方、申し訳ありませんでした。もっと大きな劇場で上映すれば良かったと、反省しております。 また一日通しで、と以前の号で書きましたが、交互上映となってしまいすみませんでした。
  この調子で第2回の『マルホランド・ドライブ』も盛況ならば良いのですが…ありえないですよねえ。カンヌも認めた大傑作なんですけどねえ。平日毎回一ケタなんてことにならないよう、祈ります。

 さて第3回は『遠い空の向こうに』が優勢です。これ意外でした。『チアーズ!』のほうがずっと知名度が高いはずですからね。会員の比率は女性の方が高いですし。さすがシティズン会員様、一般アンケートとは違います。
 締め切りは今週末です。まだ未投票の方は、下のリンクからどうぞ。

  シネマカウンシルって何?という方は >>こちら
  投票は>>こちら
『遠い空の向こうに』…DVD発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン レンタル中
『チアーズ』…DVD発売・販売元:東宝 品番:TDV2638D ¥6,000(税抜)
『デトロイト・ロック・シティ』…DVD発売中 2,940円(税込)
発売元:ファインフィルムズ/ハピネット・ピクチャーズ 販売元:ハピネット・ピクチャーズ

 
 世間一般で今「トリノ」と言えばオリンピックだそうだが、僕にとっては「トリノの聖骸布」、これだ 。
 「聖骸布」とは十字架からおろされたキリストの遺体を包んだと言われる布。そこには不思議なことに写真のようにキリストの姿が転写されているのである。一見分かりづらいのだが、誰かがその布を写真に取ってネガポジ反転したら、驚くべきことにはっきりとその姿が浮かび上がったのである! …と、子どもの頃、学研の『ムー』で読んだ。
 なぜか、こういうものが好きなのだ。全然信じてはいないのだが、カッパのミイラとか、宇宙船を描いたとしか思えないマヤ文明の石版に、金メダルよりも感動してしまう。そこから膨らむストーリーに魅せられるのだ。ニセモノと知りつつ、楽しむというスタンスは、映画にも通じる。…このへんはプロレスファンのほうが一家言あるのかもしれないけれど。
 ちなみに、次のオリンピック開催地である「北京」と言えば、「中国政府を動かす世界最強の超能力者 張宝勝」が(まだ捕まったりしてなければ)いる(はず)。彼のすごいところは中国全土でもたった12枚しか発行されていないという「何をしてもOK運転免許証」を発行されているということである! …色々気になるだろうがしかし、この話の続きは、また次のオリンピックの時に。 

表紙の顔… エンニオ・モリコーネ。映画音楽の巨匠。手がけた作品は映画にとどまらず、現代音楽、ポップスにまで至る。映画音楽だけで400本以上を手がけているらしい。『荒野の用心棒』の口笛とか、聴くだけで泣きそうになる『ニュー・シネマ・パラダイス』が代表作。原口画伯によると、オリンピックのメダル授与式で演奏し、閉会式でも曲が使用される可能性が大らしい。

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