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大ヒット中の『男たちの大和/ YAMATO 』ですが、本当はこういう映画になるはずではなかったという事実をご存じですか?
生き残って船乗りになった少年兵の一人がなぜ戦後 60 年まで生きる意味があったのかというお話はさすがにドラマティックなのですが、戦艦大和の若者たちのほとんどが、自らが死ぬことで家族をそして日本を守れるのではないかと年齢が幼いがゆえに矛盾に思うこともなく無邪気に信じていたことに触れられていないし、家族と別れを告げる若者たちをセンチメンタルに描くことや戦争シーンのスペクタクル性が際立ちすぎるように私には見えてしまいました。
映画をごらんになってひとつでも「?」とお感じになった方がもしいらっしゃったら、ぜひ月刊シナリオ 2006年1月号に掲載の『男たちの大和』オリジナルシナリオを読んでみて下さい。この作品は泣ける映画ではなく物悲しい映画でなければならなかったのではないでしょうか?
http://www.mmjp.or.jp/gekkan-scenario/
今回は戦艦大和の若者たちとは時代も背景も違えど、自分の命の可能性を信じた若者たちの 1 本の時代劇を今回はご紹介します。小林正樹監督『いのちぼうにふろう』1971年の作品です。
東京は深川。沼と堀に囲まれてまるで離れ小島のようになっている安楽亭は表向きは一膳めしやとして赤ちょうちんをぶら下げてはいるが、その実体は禁制品を抜け荷として扱う密貿易の根城。若いごろつきたちが暮らしていて一見客も店には近寄らせない。そんな隠し砦のようなその店にある日、無銭飲食をして袋叩きにあっていた富次郎というが転がり込み、続けて「ここを知っている」と言っては酔って酒を呑ませろといってくる謎の中年男が出入りするようになって様子が変わってくるのです。
富次郎は結婚を誓った幼なじみが借金のカタに女郎屋に売られてしまったものを腕力も金もないのに刺し違えてでも取り戻そうと思いのたけをぶちまける。その言葉にほだされたごろつきたちは、報酬は高いがどう考えても危険だらけの抜け荷の仕事をあえて引き受けるのです。
密貿易に必要ならば人も殺めていて、いつかはそうなるであろう若者たちは、安楽亭を取り囲んだ奉行の罠にかかって次々と召し捕られて始末されていくのですが、その当然と言えば当然の流れが、ひどく物悲しいのはそのきっかけが若者と娘を身請けさせて逃がしてやろう、生まれて初めて人のために何かをしてやろうとする若者たちの中に目覚めた無償の精神に基づいているということからです。
ようやく人の心にめざめたその時に死んでゆかねばならない若者たち。真夜中ススキが茂る川っ淵に同心たちの御用の提灯の行列がモノクロームの画面にひと際白く浮き上がり引いては寄せ、寄せては引いていく。その美しさが若者たちの無念を代弁しているかのように見えるのです。
勝新演じる謎の中年男の明らかになる悲しい過去とその深い悲しみを秘めた勝新の酔っぱらい演技もこの映画のもうひとつの見どころです!
署名運動が実って日本公開が実現した『ホテル・ルワンダ』にももうひとつの無償の精神が流れています。ドン・チードル演じる高級ホテルの支配人は危険な政権下で同じ黒人たちが「フツ族」「ツチ族」という民族間の因習を引きずり殺しあう中で何とか家族はいつでも守れるように根回しを怠っていません。
しかし紛争が本格化した時、その努力は無意味であったことに絶望するが、代わりにそんな最悪の状況下でもひとりでも多くの人を助けることができるのではないかともうひとつの可能性に賭けるお話です。あまりにもスリリングでドラマティックですが、人があまりにも虫ケラのように殺される中で、残った命がいっそう光り輝く瞬間があります。これが現実だということがまたひどく物悲しいのです。
また映画館で会いましょう!

いのちぼうにふろう 1971年/俳優座=東宝/ 2時間01分
監督 小林正樹『切腹』
原作 山本周五郎
脚本 隆 巴
撮影 岡崎宏三
音楽 武満 徹
出演 仲代達矢/栗原小巻/山本圭/佐藤慶/勝新太郎(大映)
未ビデオ化・未 DVD 化
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