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『ホテル・ルワンダ』――――1994年に起こったルワンダ大虐殺事件の渦中、敵対する部族1200人の命を救った一人のホテルマンを描く、実話の映画化。日本公開が危ぶまれていたところ、インターネット(mixi)で有志が集まり署名運動を展開。それをきっかけとして、この度公開の運びとなった。
シネマシティでも急きょ上映が決定しまして、当然試写などにも間に合わず、行って参りましたシアターN渋谷。元ユーロスペースがあったところにリニューアルオープンのような形で出来た劇場です。
先週お約束したとおり、この映画の魅力を皆さんに出来る限りちゃんとお伝えしようと、愛用しているAURORAの銀のHASTIL(万年筆)とHIGH TIDE
のクリップボードを持参して、観てすぐに原稿を書く準備は万端、到着しました渋谷駅。
日曜といえど、21日(土)からは2スクリーンに拡大、上映回数も倍となれば余裕ですよ。だいたい、あんな政治的で、しかも虐殺事件、それでルワンダってどこ? みたいな作品、当たるわけないんですよねー…って、おーーい、3回先まで満席立ち見ってどういうことですの?
いや、実は「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」の作戦会議にのこのこと出ていって、「業界人」を気取り、
「君たちねえ、ちょっと考えが甘いんじゃないの? こんな地味な映画お客さん入るわけないじゃない。ヨン様出てないんでしょ? ダメだよ、それじゃあ。こっちはねえ、伊達や酔狂で映画掛けてんじゃないんだよっ!」(参照)
といった主旨の、利いた風な口を叩き、「会」の未来を暗黒に塗りつぶしたのが私、剛山でした。
何故かって、当時(昨年夏頃)ウェブで署名を集め始めるも、思うほどには集まらず、「会」の活動といってもわずかばかりのチラシを作って、都心のめぼしい映画館に配るというくらい。「会」の皆さんには悪いですが、客観的に判断してかなりキビしい状況でしたよ。
実のところ、シネマシティでは場合によってはウチで配給しよう、というところまで可能性として考えておりました。しかし「会」の方のお話だと、一説には配給権が「1億円」というじゃないですか。
考えてみて下さい。映画料金は1800円、割引なんかを含めると、一席の平均は1300円くらいです。「1億円÷1300円≒7万7千人」です。7万7千人ですよ。1回の上映の平均が100人だとして(これでもかなりのヒットです)、770回上映しなきゃならない。1日に4回上映として、半年続ける計算です。ジブリ映画か『タイタニック』級です。
で、これだけやっても「トントン」ですよ、それも「配給権分」だけがですね。これに宣伝費から人件費、諸経費を入れたら、1年間コースです。ありえない。少なくとも1館や2館でどうにかなるものじゃないことはおわかりでしょう。シネマシティには配給の経験もないし、これは相当のリスクだったわけです。
『ホテル・ルワンダ』の公開の目途が立たない、ということが喧伝され始めると、こういう事を言う人がいました。
「このような社会派の良作が公開されないとは、日本の文化程度が知れる」
じゃあ、おまえが1億円用意しろ! タダじゃないんだよ、文化ってのは「金」なんだ! …とその時は、IT長者風のことも言いたくなったものです。
夏も終盤に差し掛かり、 運動もどんどん協力者が増えていき(1、2、3など。とりわけ映画評論家町山智浩氏はただの協力者というだけではなく、この運動を起こす大きなきっかけを作られました)、ブログを立ち上げほぼ毎日更新するなど皆さん様々に奮闘されていましたが、ブレイクスルーな展開はなく、 ただ続けていても仕方がない、10月を目途に運動を打ち切ろう、というような流れになっていたところ、9月下旬頃、突然の「配給が決定した」との知らせ。そこからは雑誌やTVでたくさん取り上げられるなど、とんとん拍子で話が進んでいき、現在に至ります。本当に「幸福な」作品です。
基本的に映画というのは家族の団らんのためや、友だちでワイワイやるためや、恋人たちのためにあるわけです。1人で映画を観る人の少ないこと。映画を観て、何かしら学ぼう、考えようという人の少ないこと。どれだけの人が、好きこのんでアフリカの内政問題について議論するために、休日の何時間かを潰すでしょう? 観賞後陽当たりの良いオープンカフェで、対立を生む政治構造について現在の政情と比較を交え論じたところで、恋人の表情は白けていくばかりです。公開を見送った最初の判断は、簡単に間違いと言えるでしょうか。僕は今もそうは思いません。
…あの、でも 僕だってデートの時には『ザ・コーポレーション』や、『ジャマイカ 楽園の真実』なんか絶対に選びませんよ。そんな野暮な男じゃない、基本的にロマンティック専門です。今なら『僕のニューヨークライフ』だな。ウディ・アレン最高。
そんな中で、僕や、これを読んでくださっているあなたは、少数派、マイノリティなんです。よく「日本人の年間平均映画鑑賞回数は1〜2回」なんて言うけれど、そんな数字はまるっきりウソです。僕や、あなたが年に10〜100回観ているだけなんだ。
だから僕たちが自分の「いつも観ているタイプの映画」の中に、年に1、2本でもいい「いつも観ないタイプの映画」を入れるだけで救われる作品があるはずなのです。…寄付かって? それは違います。このことは僕らの世界を拡げることにもつながる。
例えば、 都会派でならした僕ですが、年明けすぐに『マサイ』を観に行きました。マサイの戦士たちは「弱気になる」ということの意味がわからないそうですよ。つまり全員すごい強気。ウディの作品からはそんなこと学べなかったな。観て良かった。
「金・金・金」のイヤな世の中ですが、逆手にとってやればいいんです。「需要」を作り出せばいいんです。観客がいることを、示すのです。それは街中にスピーカーで声高に叫ぶ必要なんてなく、ただ黙ってチケットを買えばいいのです。それだけで変えることができる。これは資本主義の良い面でしょう。
そして僕のような「知った風な」人間を見返して下さい。何度でも、何度でも、席を埋め尽くして、僕を劇場へ入れさせないで下さい。そのたびに僕は、何も観られなかったにも関わらず、満たされて帰途に着くでしょう。
もし、僕が何もせず帰宅することを何度も繰り返すほどになったなら、第二、第三の『ホテル・ルワンダ』が製作され、今度こそ全国公開される日が来るかもしれません。こんなポスターが日本中の映画館に、誇らしげに貼られる日が、いつか来るかもしれません。
あの『ホテル・ルワンダ』をも超える感動! ――――1人の男の情熱が、2000人くらいを救う! ぺ・ヨンジュン主演『ホテル・ウガンダ』!
…道のりは平坦なばかりではない。されど、歩みを止めることなかれ。
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